第87話 帝国の闇夜
あの皇帝陛下の事である。
俺に刺客を送って一度失敗したからといって諦めるような奴ではないだろう。
むしろ逆に何としてでも俺を捕縛しようとしてくるであろうと思っていたし、一度俺を捕縛する事を失敗したことが分かったガイウス皇帝陛下は即座に刺客を俺に送って捕縛させるように命令しているはずである。
その為俺に刺客が送られて来た事については疑問に思わないし、なんなら『でしょうね』と思うのだが、ただ送られた刺客が一人しか見当たらない事に俺は違和感を感じてしまうので思わず周囲を見渡してしまう。
「残念ながら私一人でここに来たわ」
そんな俺の態度を見て目の前の女性が喋り出す。
「本当に皇帝陛下は失礼しちゃうわよね。 たかが小僧一人を捕縛して来るだけなのに私一人では心もとないから他の魔術師もつれて行けって言うんですもの。 この【帝国の闇夜】と恐れられているシャルロット・ホーエンハイムに向かってよ? どうやらその理由は先に帝国の冒険者や傭兵、騎士団の一部等数百人であなたを捕縛しに向かって返り討ちにあったかららしいのと、あなたの後ろには帝国を転覆させようとしている黒幕がいるような事を言っていたのだけれども、そんなのはただ単に先に行った奴らがバカで間抜けで雑魚であっただけであり私があなた如きを一人で捕縛できない理由にはならないわ。 むしろ失礼極まりないとは思わないかしら?」
そして自分の事をシャルロット・ホーエンハイムと名乗った魔術師の女性は聞いてもいないのにそんな事をべらべらと喋り始める。
しかしながら相手の依頼主は俺を捕縛して拷問の上殺そうとしている奴であり、そんな奴から送られて来た刺客をどうして信用する事ができようか。
その為俺は相手に悟られないようにマップを開いて周囲に敵が潜んでいないか確認する。
するとどうだ? ざっと数えても五十人は潜んでいるではないか。
最初の時よりかはかなり人数的には少なくなっているのだが、これらが全員魔術師であるとするならば良くこの短時間で五十人も集めたと褒めてやりたい程である。
おそらく皇帝陛下では短時間でこれだけの魔術師を集める事は、皇帝陛下自身の人徳の無さも相まって難しい為、それだけシャルロットに人徳があったという事なのであろうし、口先だけではなくそれだけの実力も備わっているという事なのだろう。
「じゃぁ、周辺に潜んでいる約五十人ほどの人たちは俺を捕縛する為に集められた訳ではないと、そう言いたいのか?」
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