第86話 潰す事は確定事項


 そんなシシル先生を見たオリヴィアがようやっとその事について疑問を抱き始めたのかシシルへ何でここにいるのかを聞き始めるではないか。


「コイツ? コイツはただの変態で俺のストーカーだ」


 なので俺はシシルが何かを話し出す前に、食い気味に真実を教えてやる。


「え? 本当にそうなんですか? それにしてはストーカーを家に上げてしまっているのですが主様は大丈夫なのでしょうか?」

「うん、大丈夫じゃねぇな」

「えっ!? ではシシル先生は主様のストーカーで、今現在不法侵入しているという事ですかっ!? 一大事じゃないですかっ!!」

「そうなんだよなぁー」

「なんでそんなに落ち着ているんですかっ!?」


 そして俺はシシルを俺のストーカーであると説明すると、オリヴィアは俺の騎士らしく、主である俺を守ろうと前に出て剣を抜くとシシルと相対する。


 うーん、なんというか猪突猛進というか、真面目過ぎるというか、良くも悪くも真っ直ぐである。


「まったく、照れなくても良いのに、ご主人様ったら。 でもそんな可愛らしい一面を持っている私のご主人様は愛おしいわね。 因みに私は正真正銘ご主人様の奴隷よ。 ホラ、隷属紋がここにあるでしょう?」

「…………た、確かに」


 そんなオリヴィアに対してシシルは警戒するでもなく近づいていくと、胸元にある奴隷紋をオリヴィアに見せて俺の奴隷である証明をするではないか。


 その奴隷紋をオリヴィアは何故か羨ましそうに見つめているような気がするのだが、気のせいだろうか?


 そんな駄奴隷とポンコツ女騎士とのやり取りを眺めていたその時、周囲の空気が明らかに変わったのが分かる。


 どうやらまたお呼びでない来客が来たようなので、出迎えるとしよう。


 そして皇帝陛下に対しては、流石に二回も俺に刺客を送って来た時点で許すつもりは毛頭無い。


 潰す事は確定事項である。


 まさか自分は俺に対して刺客を送っておいて、やり返されないとでも思っているのだろうか? 


 だとしたら甘いと言わざるを得ない。


 今まで皇帝という地位でやり返されるという事が無かったが故に、自分の起こす行動に覚悟が全く感じられないのでしっかりと教えてやる必要があるだろう。


 殴ったら殴り返されるって至極単純な事を。


 そんな事を思いながら俺は昨日と同じように玄関から外に出てみると、そこには妖艶な、胸元が開いたドレスを着ている魔術師であろう女性がそこにいた。


「あら、意外と気付くのが早いわね、坊や」


 女性は大きな魔杖を持って頭には魔女のような大きなとんがり帽子をかぶり、髪の毛はカラスの羽のように黒くも見る角度によっては紫色に輝き、そしてかなり整った顔立ちをしているのが分かる。

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