第84話 試しに壺を売ってみたい
いや、だから思っている事が二人とも全然隠しきれていなくてだだ漏れしているんだけど、ここでその事を突っ込んでしまうとややこしい事になりそうなのでぐっと堪える。
「……まぁいいや。 とりあえずオリヴィアも俺に対して謝罪したいという気持ちも伝わって来たことだし(どちらかというと謝罪したいという感情からの行動よりかは崇拝に近い感情から来た行動に近いような気がするのだがそこは
「……っ!? あ、主様っ!! ありがとうございますっ!!」
そして俺がオリヴィアの腕を約束していた通り治してやると言うと、オリビアはまるで胡散臭そうな芝居がかったような大げさな態度で、口を開け、その口を左手で隠しながら感動し始め、終いには涙まで流し始めるではないか。
その姿は新興宗教にハマり、教祖様からありがたいお言葉を直接もらったかのようにも見えるのは気のせいだろうか?
とりあえずオリヴィアが俺に対する感情についても、面倒くさそうなので目を逸らそう。
厄介事には首を突っ込まない方が良いに決まっている。
むしろリリアナはこのオリヴィアを今まで御して来たのだと思うと少しばかり尊敬してしまう。
「いや、まぁ……俺も腕を切り落とすのは少しばかりやりすぎたかな? とは思っていたから別にオリヴィアが俺に感謝をする必要はないからな」
「いや、どう考えてもあの一件はどの角度から見ても私が全面的に悪く、むしろ腕の一本だけで良かったと思えるほどなので主様は気に病むことは何一つございませんっ!! しかも私の腕を返してくれるという、慈悲深さに私は感動で胸が一杯でございますっ!!」
これ、マジで『この壺は幸せを運ぶ壺であり、それだけではなく俺の悪霊を滅する気の力も入れているから不運も遠ざける事ができます』とか言って高値で売りつけた場合、オリヴィアは疑う事など一切せずそのまま購入しそうだな、と目の前で陶酔しているオリヴィアの表情を見てそんな事を思ってしまう。
少しばかり試しに壺を売ってみたいと思ってしまうのだが、ここはぐっと我慢である。
そんな事を思いながら俺はストレージからオリヴィアの右腕を取り出すと、そのまま【再生魔術】でくっつけてやることにする。
ちなみに回復魔術の場合は傷口が塞がってしまっているのでくっつける事はできないし、できたとしても神経ごと切っているので肩から先を動かす事はできない可能性がかなり高い。
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