第82話 また面倒な事を
「なぁ、クーリングオフってできるのか?」
「なんですか? くーりんぐおふって……。 私が無知なせいで主様がせっかく私に質問をしてくれたのですが何もお答えできなくて申し訳ございません……っ」
「いや、いい。 俺も変な事を聞いて悪かった……。 忘れてくれ」
いや、うん。 知ってた。 クーリングオフが出来ないことも、オリヴィアがクーリングオフという言葉を知らない事も。
「な、なんという優しさ、器の大きさなのでしょうかっ!? やはり私の目に狂いはなかったようですっ!! カイザル様を主にした私の判断は間違っていなかったという事が分かって良かったですっ!! リリアナ様とは大違いですっ!!」
そして、オリヴィアは、俺がクーリングオフを知らない事を指摘されると思っていたのであろう。
しかしながら指摘するどころか『変な事を聞いて悪かった』と謝罪をしてきた事に感激したのかただでさえキラキラした表情でこちらを見て来ていたのが、そこへさらに陶酔したような雰囲気まで追加されてきているではないか。
しかもそれだけでは無く、オリヴィアは俺とリリアナを比べ大違いとまで言って、リリアナを下げるような発言までするではないか。
以前のオリヴィアであったらそのような事は絶対に無かったので俺は少しばかり驚愕してしまう。
一体このたった数時間の間にオリヴィアに何があればこんな事になるというのだろうか。
いくら想像しても全くもって想像できないんだが……。
そもそも、このどう考えても猪突猛進、典型的な脳みそ筋肉思考であるオリヴィアをこちらサイドに引き入れるのはかなりリスクが高すぎる為本当にクーリングオフしたいんだが……。
あのリリアナですらオリヴィアを御しきれていないのは、今日のオリヴィアを見れば一目瞭然であろう。
そのため『カイザル様の為に行動しましたっ!!』とか言って問題を次から次まで作って来ては俺が尻ぬぐいしなければならない未来が鮮明に脳裏に浮かび上がるんだが……。
「良いじゃないですか、ご主人様。 黙っていればオリヴィアさんは美人ですし、私も加わってまさに両手に花と考えればご主人様の雄の部分も満たされるのではないかしら?」
さて、この制御不能の歩くミサイルをどうしようかと悩んでいると、部屋で大人しくしているはずのシシルがひょっこり廊下の角から現れて、また面倒な事を言い始めるではないか。
たのむからこれ以上ややこしくしないでくれ。 できる事ならばそのまま俺の影を使って自分の家に帰ってくれないかなぁ。 そしてオリヴィアも変な事を考えないでくれと願うばかりである。
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