第80話 まるで別人のよう

 そんな事を思いながら俺は玄関まで向かうと、扉を開ける。


 するとそこにはオリヴィア・グラン・ホーエンツォレルンがいるではないか。


 まさかあのプライドだけが無駄に高いオリヴィアが、わざわざ見下している俺へ謝罪をしに来るとは思いもよらなかった為、少しだけフリーズしてしまう。


「なんでお前がここに…………って、俺が腕を返してもらいたければ謝罪をしに来いとは言ったんだけれども、まさか本当に来るとはな……」


 しかしながらあのオリヴィアの事である。 謝罪に来たと見せかけて今一度俺に挑みに来た可能性だってあるので『あのオリヴィアが謝罪に来た』と思うのはまだ早計であろう。


「はい。 私はカイザル様へ謝罪をしにここまで来ました」

「そうか、やっぱり懲りずに俺に再度噛みついて来た……はい? オリヴィアが俺にわざわざ謝罪をしに来た?」

「はい、そうです」

「いや、ちょっと待ってくれ。 オリヴィアは今日数時間前に俺に対して見下した発言をして噛みつくだけではなく、剣を抜いた結果俺に右腕を切り落とされたよな?」

「は、はい……そうですが?」


 そして俺は、オリヴィアが俺に謝罪をしに来たという事がいまだに信じられずに思わずオリヴィアに対して数時間前に俺へ喧嘩を売って来て返り討ちにあったあのオリヴィア本人であるかどうか確認をしてしまう。


 どう見ても目の前にいるのは俺に片腕を切り落とされたオリヴィアなのだが、どうしてもあのオリヴィアが、例え腕を返してもらえる為とはいえ素直に謝罪しに来るとはどうしても思えなかった。


 そんな俺の心情など知るはずもないオリヴィアは少しだけ不安そうな表情で俺を見つめて来る。


 その表情は数時間前にみたオリヴィアの表情や、今まで数年間俺の事を見下していたオリヴィアの表情でもなく、今まで見たことない初めて見る表情をしていた。


 そのオリヴィアの表情からは不安げな感じは伝わってくるのだがいつものような剣呑さは感じられない。


 ただそれだけなのにまるで別人のように見えてしまう。


「そうか……」

「そうですっ!! では早速謝罪をさせていただきたく思いますっ!!」


 そしてオリヴィアはそう言うと、地面に膝をつき、頭を下げる。


「カイザル様、恐らく今私がここで謝罪を口にしたとしても、私がカイザル様に数年間に渡っておこなって来た内容を考えるととてもではないが反省しているとは思えないであろう事は理解しております」


 そういうとオリヴィアはスキルを発動したのか、彼女の身体が淡い金色に光り出す。

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