第79話 今の俺であればどうにでもなる
となると残りは一人、駄エルフに絞られる訳で……。
しかしながらあの駄エルフは俺の影を通して俺の元に現れる事ができる為わざわざ表の世界を移動してきてまで俺の住んでいる屋敷にまで訪れる理由が分からない。
あるとすれば家具一式持って来てこの屋敷に住まわせて欲しいと懇願しに来る以外考えられない訳で、そんな事を普通するか……?
そこまで考えて俺は冷や汗が背中から流れ出す。
「あの駄エルフだとあり得そうだな……っ」
「誰が駄エルフなのかしら?」
「ひぃっ!? って、ビックリさせるなよな……」
「この愛しの奴隷エルフちゃんに対して駄エルフとは、照れ隠しとはいえ酷いのではないかしら?」
「いや、流石に自分の事を『愛しの奴隷エルフちゃん』って呼ぶのはちょっと痛くないか? シシルの年齢的に」
「なっ!? ね、年齢の事は今はどうでも良いでしょうっ!?」
そう思っていたのだが最有力候補であった駄エルフが俺の陰から出てきたので違ったようである。
「ま、まぁ……好きな異性に素直に好意を向ける事が恥ずかしくて思わず照れ隠ししたい年頃なのは分かるので、ここは大人のお姉さんである私がちゃんと理解して受け止めてあげるべきよね、うん。 それに、これは私の事を信頼しているからこそ、それくらいの事で私の、ご主人様に対する恋慕が色褪せる事がないと思えたからこその発言と思えば何だかご主人様の照れ隠しも棘が大きければ大きいほど愛おしく感じてしまうわね」
それだけならばまだ少しビックリしただけで良かったのだが、とりあえず誰かこの脳内お花畑の駄エルフをどうにかしてほしい。 寧ろこいつを病院に連れていて治療をしなければならない程の重症であると思うのだが、最早手の施しようの無いほど頭がピンク色に染まっており、既に手遅れであろうことが容易に想像できてしまう。
「…………何かしらその、まるで近所の発情した野良猫を見て『うるさいけど、どうしようもないから放っておくか』みたいな目は」
「分かっているじゃないか。 とりあえず今人を待たせえているみたいだからとりあえず玄関まで向かうけど、頼むから俺の部屋で待機して大人しくしていてくれ。 いいな?」
「流石にご主人様の手を煩わせるような事はしないわよ。 失礼ね」
そして俺は自分の部屋にこの駄エルフを一人置いていく事に一抹の不安を覚えながらもこれ以上待たせるわけにもいかないと玄関へと向かう。
何か駄エルフがやらかしたところで手間が増えるだけで今の俺であればどうにでもなるだろう。
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