第78話 謝罪をしに来るとは考えづらい
そしてリリアナ様は私を見つけるや否やきつい口調でいままでどこへ行っていたのか聞いてくる。
「はい……カイザルのところへ行っておりました」
「なっ!? なんでそんな事をしたのよっ!? というかオリヴィアの片腕が無いのだけれども、それはまさか……」
「はい、そのまさかでございます。 私がカイザルを見下した結果片腕を切り落とされました」
以前の私であればここでリリアナ様の怒りを鎮めるために言い訳を並べていたのであろうが、今の私はそんな事はせず、ただ事実を述べる。
そんな私の態度にリリアナ様はさらに不機嫌になっていくのがその表情から見て取れる。
「あなたは……あれほど注意して、土下座までしてカイザルに謝罪したにも関わらず、何故土下座させられたのか考えもせずにあの後カイザルの元へ一人で行き、喧嘩を売った上に返り討ちにあい、片腕を切り落とされて帰って来たと……そういう事かしら?」
「それで間違いありません」
そして私がそう返した瞬間、乾いた音が響き渡る。
リリアナ様が私の左頬を平手打ちして、少し遅れてジンジンとした痛みが熱を持ってやって来る。
「で、出ていきなさいっ!! あなたはあの時いなかったからカイザルの恐ろしさを知らないのでしょうけど、だからと言って主人である私の指示に反する行動を取るなどあなたを側に置いておく理由は無いわっ!! むしろ貴女のせいで私がカイザルに要らぬ誤解を与えてしまい目を付けられでもしたらどう責任を取るつもりかしらっ!? いい加減にして頂戴っ!!」
「かしこまりました……。 今までありがとうございました」
結局リリアナ様は私の事を一人の人間ではなく、道具か何かだと思っていたのであろうことがこれで良くわかった。
そして私は着の身着のままリリアナ様の屋敷から追い出され、気が付くとクヴィスト家の門の前まで来ていたのであった。
◆
「カイザル様を訪ねて来ている方がおりますがどうしましょうか?」
俺が自室で寛いでいると使用人がノックをしてから入って来て俺に人が会いに来ていることを告げる。
誰かと約束をしていたとかもないし、もし用事でクヴィスト家に来たのであれば表向きは未だに当主として働いてもらっている父親であるエドワードへ会いに来るはずであろう。
あるとるればオリヴィアが俺に切り落とされ腕を返してもらいに謝罪をしに来るぐらいであろうが、あの脳みそ筋肉であり無駄にプライドだけはでかいオリヴィアが見下している俺に謝罪をしに来るとは考えづらい。
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