第75話 大丈夫だと思い見下していた
そして、実際に腕を切りおとされた私自身あの瞬間に何をされたのか全く分からなかったという事がカイザルの強さを窺える事が出来る。
いったいいつからカイザルはあれほどの強さを持っていたのであろうか。
もしかしたらかなり前からカイザルは自身の力を隠してきたのかもしれない。
そう思うと私はゾッとしてしまう。
もしそうなのであれば、そして私の想像通りのカイザルの強さなのであればリリアナ様があれほど、それこそ土下座をしてまでカイザルへと謝罪するのも理解ができるし、あの日カイザルはダグラスを簡単に倒してクヴィスト家の家督を継ぐ事になったのであろう事も窺えて来る。
私はそんな相手に今までどのような態度を取って来たのかと思うと冷汗が止まらなくなる。
それこそ私はダグラスがクヴィスト家を継ぐものであると思っていたし、そんなダグラスとリリアナ様が婚姻関係を結ぶものと思っていた。
そして私は強くなれるだけの環境があるにも関わらず弱い者が嫌いであった。
カイザルは強くなれるだけの環境があるにも関わらず、年下の弟にすら勝てないどころか小等部の子供にすら勝てるかどうか分からないような魔術しか扱えず、武術に関しても同学年でカイザルより弱い者はおらず、小等部高学年でやっと同レベルの強さであるという具合であった。
そんなカイザルが私は心の底から嫌いであったし、公爵家であるという事は理解していたものの、リリアナ様やダグラスがカイザルの事を貶しているのだから自分もカイザルを貶して大丈夫だと思い見下していた。
そして私がそのような態度を取ればリリアナ様やダグラスは喜んでいたし、例えカイザルから貴族間の階級の事を指摘された場合は力でねじ伏せてどちらが上の立場かという事をしっかりとその身体へ教え込むつもりだったのだが、カイザルは私に対して歯向かってくるどころか何も悪い事をしていないにも関わらず謝罪をしてくるではないか。
強いて悪いと言うのであれば公爵家という好条件の生まれであるにも関わらず胡坐をかいて強くなろうとしなかった事であり、それは私にとってカイザルを貶してもいい判断材料でもあった為、日に日にカイザルへ対する行いは歯止めが利かなくなり過激になっていった。
しかしながら、カイザルは私たち、いや、私たちだけではなくカイザルに関わる全ての人にひた隠しにしながら一人努力をしてきたのであろう。
何故そんな事をカイザルがしなければならないのかは分からないのだが、カイザルが私の腕を切り落としたあの動き一つだけ見てもかなり努力してきた事が窺えることが出来る。
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