第74話 ぶん殴る
そう言いながら俺はオリヴィアに近づいていく。
「ひ、ひぃっ!?」
「あ、そうそう。 ぶん殴るのを忘れてたわ。 さっき切り落とした腕は先程の不敬分だが、今までお前は俺に対してかなり偉そうな態度で接してきた分をまだ返してなかったわ。 おれ、かなり根に持つタイプなんだよな」
そして俺はオリヴィアの腹をぶん殴る。
殴る箇所が顔じゃないだけありがたいと思って欲しい。
「おげぇ……っ!!」
「ちゃんと掃除はしとけよ? あと、この腕は俺が預かっておくわ。 これでリリアナの元に言って治りましたじゃぁ俺がお前の腕を切り落とした意味が無くなるからな。 ちゃんと反省して、俺に謝罪ができた時にはちゃんと腕は返してやるよ。 勿論、その時はちゃんと腕を綺麗にくっつけてやるよ。 あ、出血多量で死なれちゃ寝覚めが悪いから一応止血程度の回復魔術は行使しといてやるよ。 それじゃ」
「ちょっ、ま……待ちなさいっ!!」
そして俺はもうやる事も言う事も無くなった為オリヴィアの腕が腐らないようにストレージに保存もかねて収納してこの場から去ろうとすると、オリヴィアが苦悶の表情でお腹を押さえながら何とか声を絞り出して俺に待てと言うではないか。
「あ? まだ分からないのか? 待てじゃなくて待って下さいだろう?」
「ま、待って……ください…………っ!!」
「嫌だね」
「なっ、貴様っ!!」
「そういう所だよ。 まるで反省していないじゃないか。 反省もしていないお前とは何も話す事も無ければ待ってやる道理もないだろ」
なんでここまで力の差を見せつけて、貴族階級でも俺の方が上であるにも関わらずまだこいつはこれ程偉そうな態度で俺に話しかけてくるのか、俺には全く以て理解できないのだが、理解してやるつもりも無ければ態度を変えない限りは相手にするつもりも無い。
「ま、待ってくださいっ!! ま、待って……っ!! お願いだからっ!!」
後ろからまだ俺に待つように言ってきているのだがこれ以上無駄な時間を取りたくない俺はそのまま無視して帰路に就くのであった。
◆
何が起きたのか全く理解できなかった。
どうやって私の腕を切り落としたのか目視する事すら出来ずに気が付いたら私の腕が切り落とされているではないか。
私は、カイザルが私の剣を何らかの方法で切り落とした事には確かに驚きはしたものの何故かハッタリか何かであろうと気にもしなかった。
そもそも魔術も体術も碌に扱えないような奴が私に何かしようと歯向かってきたところで返り討ちにできるという自信が私の思考を曇らせて正しい判断をできなくさせていたのだと今になって思う。
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