第71話 お前、剣を抜いたね?
「貴様だっ貴様っ!! カイザルッ! お前の事だっ!!」
どう考えてもこんな奴に付き合うと時間の無駄でしかない為俺の進行方向を塞がれたもののその横を強引に通ろうとするのだが、リリアナの側仕えであるオリヴィア・グラン・ホーエンツォレルンは俺の肩をそのゴリラのような握力で掴むと強引に俺の歩みを止めるではないか。
「……確か、君はオリヴィア・グラン・ホーエンツォレルンで良かったかな?」
「貴様ごときが私の名前を気安く呼ぶ出ないっ!」
「まぁ、別に良いが……確か君は代々皇族に仕える家系と言えども侯爵家であった気がするのだが、侯爵家はいつから公爵家より偉くなったんだ? それこそ俺の名前を呼び捨てにするだけではなく俺の肩を掴んでまでその歩みを止める程偉くなったんだ? 俺の記憶が正しければそんな変更は無かった気がするんだが? それとも何か? マナーすら分からない程お前がバカだという事なのか? それならば知らないのも仕方がないな。 じゃぁ優しい俺がバカなお前に教えてやるよ。 侯爵家は公爵家よりも立場は下だから今お前がしている行為は本来であればその瞬間首を飛ばされても文句が言えない程失礼極まりない行為だと覚えておけ。 あと、お前の仕事はリリアナの側仕えであり護衛であるにも関わらずその仕える対象であるリリアナを放っといて何をしているんだ? お前は。 任された仕事も満足にできないのならばその爵位なんか捨ててしまえよ。 あと俺は放課後長々と学園に残るような用事もないからさっさと帰らせろよ」
「あっ、なっ、ぐ……っ」
そしてまさか俺が、しかもかなりの長文を言い返してくるとは思ってもみなかったのであろう。
まるでハトが豆鉄砲を喰らっているような表情でオリヴィアは俺を見つめ、固まってしまう。
恐らくオリヴィアは、いつものように俺が謝罪をしてくるものだと思っていたのであろう。
その予想が外れた上に反撃されるとは思ってもいなかった事がオリヴィアの反応から窺える。
「わ、私に向かってお前ごとき糞虫が……言って良い事と悪い事も分からないのかっ!?」
「お前、剣を抜いたね?」
その結果オリヴィアは怒りに任せて腰に帯剣していた剣を鞘から抜き出して俺へその切っ先を向けてくるではないか。
当初は言いたいことだけを言って、それで何も反撃して来なければ何もせずそのまま帰宅するつもりだったのだが、噛みついて来ると言うのであれば話は別である。
「それがどうしたっ!? むしろお前の方こそ私に剣を抜かせた事がどういう事であるのか分かっているかっ!?」
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