第67話 土下座をした事は大したものである
俺にサディズムの気があればまた話は別なのだろうが、そういう趣味は無いので反撃できない状況で一方的に無理強いや拷問などを行って相手に絶望を与える方法をするつもりは毛頭ない。
どうせするのならば反撃できる状況で一方的にボコボコにする方が何倍も爽快感がある上に、相手も反撃できる状況にも関わらず一方的にボコボコにされたという記憶を刻み付ける事ができる。
それに、堕ちて行くのであれば自らの判断で堕ちて行ってくれれば自らの無能さにも気づけて一石二鳥であろう。
なので、まだ『隷属されているからカイザルに何かされても反撃できないんだ』という思考ができる分だけ、俺からすれば奴隷に堕として苛め抜くというのは甘いと言わざるを得ない。
やはり、やるからには圧倒的な力の差を見せつけて自分の無力感をその胸に刻んでから俺に噛みついて来た事を後悔させたいという俺の願望もある。
そんな事を俺はシシルへ説明している内に馬車は学園へと着いたようである。
そして扉を開き、馬車から降りようとしたその時、俺が登校して来るのを待っていたのであろうリリアナが俺を見かけた瞬間に血相を変えて走って来ると、他の生徒がいるにも関わらず土下座して来るではないか。
「……何を考えている?」
そんなリリアナの姿を見て俺は内心盛大な舌打ちを吐きながらリリアナへ何を考えているのかを聞く。
因みにその間シシルは俺の影を通って姿を消しているので、今リリアナが馬車から降りた俺の前で土下座しているせいで野次馬ができ始めたとしても、俺とシシルが一緒の馬車で登校してきたのを見た者はいないだろう。
こういう細やかな部分からもシシルは何だかんだ言いながらも俺に忠誠心がある事が窺えて来るので嫌いになれないから困ったものである。
「わ、私ではありませんっ!! 信じてくださいっ!! 信じてくださいっ!! 今回の一件は私ではありませんっ!!」
「リリアナ様っ!! こんなクズに頭を、それも土下座なんてする必要はありませんっ!! むしろコイツがリリアナ様へ土下座をさせるべきですっ!!」
そしてどうやらリリアナによる突然の土下座は、リリアナの父親である皇帝ガイウスが俺に向けて行った昨日の行為の原因がリリアナによる告げ口であると俺が思っていると思った為、こうして土下座をしてまで事実無根である事を証明しようとしているのであろう。
地面に向けられた表情がどんな表情をしているのか分からない、それこそ憤怒の表情であろうとも周囲に大勢人がいる前で土下座をした事は大したものである。
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