第66話 ハイ終わりでは生温い



 面倒くさい事この上ないのだが、いざこいつ等を追い出した時に代わりがいませんでしたという訳にもいかないので面倒くさくてもやらなければならない事だろう。


 だからこそ、今すぐやらなければならなければならないからこそ余計に面倒くさく感じてしまうのはなぜだろう。


 前世であれば『今スグに家族のいずれかと縁を切るわけではないから後回しでも良いだろう』と緊急性が無いものに関しては全て後回しにしてきたせいで、最終的にどうしようもない状況になっていた。

 

 その癖を社会人になってから矯正するのはかなり苦労したものである。


 とりあえずは奴隷でも購入して育てる方向で良いだろう。


 変に人を雇って育てて裏切られた場合は人材、時間、育て上げるまでにかかった金銭と無駄になるくらいならば、はじめから裏切る事が出来ない奴隷に覚えさせれば良いだろう。


「では自らの家族を奴隷に落とせば良いのではないかしら? 正直ご主人様であればあのクズ家族たちを強引に奴隷にしてしまう事など簡単でしょう? それこそ私を奴隷にしたみたいに」


 あれから朝食を食べ終え、学園へ登校するために馬車に乗りながらそんな独り言を呟いていると、毎度のごとくシシルが俺の影から現れて『新しい奴隷を購入するくらいならば俺の家族を奴隷にすれば良いではないか』と俺の独り言に返事を返す。


「そうすれば新たに奴隷を買うお金も、育てる時間も消費する必要はなくなるわよ?」

「確かに、シシルの言う通り俺の家族を奴隷にすれば全て解決するのだが、それだと生温いだろう?」

「生温い……?」


 そして俺はシシルの問いに『家族を奴隷に墜とすのは生温い』と答えると、シシルは何故生温いという事になるのか分かっていないようでコテンと首を傾げながら(悔しいが可愛いと思ってしまう)オウム返ししながら聞き返してくる。


「いやだってそうだろう? 奴隷という縁で繋がることが出来、縁が切れるかも知れないという心配をする必要が無くなるのだから。 今のシシルみたいにな。 それならばいつ俺に縁を切られて平民に墜とされるかも分からない恐怖と不安を抱えながら過ごしてほしいし、奴隷に墜としたことで奴らに安心を与えるなど本末転倒ではないか」


 そう、俺の家族には真綿でゆっくりと首を絞めていくように少しずつ、しかしながら確実に苦しめてやりたいのである。


 奴隷に墜としてハイ終わりでは生温いし、俺の楽しみがそこで終わってしまうではないか。


 奴隷だからと強制したり命令したりするのも趣味ではないので猶更である。

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