第65話 毛頭ない

 そして俺はそのままダイニングへと向かう。


「お、おはよう……」

「おはよう……ございます」

「おはようございますわ……っ」


 俺がダイニングへと入ると既に家族は揃っていたらしく、父親、弟、母親の順番で挨拶をしてくる。


 父親は今だに家長であるというプライドから俺にため口で話しかけてくるのだが、緊張からかどもっており、弟はあの日以降プライドは粉々にされたのか一応どもりながらも敬語で挨拶をしてくる。


 そして母親は父親や弟と違い笑顔を向けながらスムーズに挨拶をしてくるのだが、その笑顔の裏側では俺の首を狙っている事が僅かに漏れるその殺気から伝わって来る。


 流石女性だけあって名女優も顔負けの演技なのだが、今まで人に媚び諂うという事をしてこなかったが故にその演技には綻びがあった。


 そしてそれは弟のぎこちない挨拶にも言える事だろう。


「あぁ、別に挨拶なんかしなくても良いよ。 適当に朝食を食べといて。 俺も適当に朝食を食べておくから。 あと、父親と母親は俺面倒な領地経営やパーティーなどはしっかりと俺の代わりに働き、顔を出しておいてよ。 あ、一応領地経営に関しては後で俺がお金の流れや事業内容等についてしっかりと目を通しておくから適当な経営や横領紛いな事をしたら直ぐにバレるからな? 言っておくけど気付いた瞬間にクヴィスト家を追い出して勘当にするから変な事をしようだなんて考えないように。 勿論、領地経営を運営するにあたって知識不足や能力不足の可能性もあるので明らかに悪意からなる内容でない限りは勘当しないからそこは安心してほしい。 あと、パーティーでの必要経費は先に請求するように。 問題ないと俺が判断すればその分の代金は支払おう。 それと、急な出費に関しては後日その理由と共に提出すれば対応しよう。 ただしこの出費に関しても俺が必要であったと判断した物だけだ。 とりあえず、細かな点に関しては後で資料を渡すからしっっっかりと目を通しておくように。 後で読んでいなかったという言い訳は通用しないからな?」

「わ、分かった……っ」

「わ……わ、分かりましたっ」

「分かりました……っ」


 とりあえず、家族団らんなんぞするつもりなど毛頭ないのでこれからの事に関してについて一気に話すと、話はこれで終わりとばかりに俺は朝食を取り始める。


 使えるうちは使うつもりではあるのだが、こいつらがバカをして勘当した時の為にこれからは人材育成も視野に入れなければならないだろう。

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