第68話 リリアナの癖
「黙りなさいっ!! 私の邪魔をするのであればオリヴィアとて許しませんよっ!! それが嫌ならば私と同じように土下座をしてカイザル様に謝罪をしなさいっ!!」
「リ、リリアナ様……っ。 ど、どうして……っ」
「聞こえなかったのかしら? オリヴィア。 私に捨てられたくなければ今すぐ土下座をしてカイザル様に謝罪をしなさい」
「……わ、わかりました」
そしてオリヴィアが土下座しているリリアナへ止めるように言うのだが、リリアナはそんなオリヴィアに対して叱りつけ、オリヴィアにも土下座の上俺へ謝罪するように言うではないか。
土下座している為リリアナの表情は分からないのだが、その声音からリリアナは本気で言っている事が伝わってくる。
これで心の中では間違いなく俺への憎悪を滾らせているのだろうだから女性はつくづく女優だなと思ってしまう。
何故俺が、今のリリアナの言動が演技である事が分かったかというと、本人は気づいていないのかもしれないのだが昔からリリアナは嫌なことや気に入らない事、怒っている時などは耳がピクピクと少し動いているのである。
そして、土下座している時のリリアナの耳もまたピクピクと動いているのが丸見えであった。
これでも一応俺とリリアナは、婚約したばかりの頃はお互いに仲が良く、今のような関係ではなかったからこそ知りえたリリアナの癖なのだが、まさかこんなところで役に立つとは思わなかった。
「カ、カイザル様……誠に申し訳ございませんでした……っ!!」
そんな腹黒な主に命令されたオリヴィアは、唇を血が出るまで噛みしめると、ゆっくりと土下座をし始め、そして絞り出すように謝罪をする。
その態度からは『言われたから土下座をするけど、本心では何故自分が土下座をしなければならないのか』というのが伝わってくる。
「お前ら、リリアナにオリヴィアは何が悪いと思って俺に謝罪をしているのだ? はっきり言って目障りだし心の籠っていない謝罪はそれが例え土下座であろうとも邪魔でしかないから退いてくれねぇか?」
しかしながら、相手が土下座をしたからと言って許すか許さないかはまた別のはなしである。
そもそもリリアナもオリヴィアも自分が悪いとは思っていないであろうし、そんな二人から謝罪をされたところで、それが例え土下座であろうともその謝罪になんの意味があるというのだろうか。
むしろ俺が進む方向を二人で土下座をして妨げているのでただ単純に邪魔でしかない。
そして俺は尚も地面に頭をつけて土下座をしている二人を避け、関係ないとばかりに通り過ぎるのであった。
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