第62話 バカはこれだから困る

「まぁよい」

「ガ、ガイウス皇帝陛下っ!!」

 

 我がそう言うと、まるで許されたのかと勘違いしたであろうクズが土気色の表情から一気に血色が戻り、我に向かって希望に満ちた表情を向けて来るではないか。


「こやつを牢へぶち込んでおけっ」

「ガ、ガイウス皇帝陛下っ!?」


 そして我はこのクズを縛っている縄を握っている兵士へ、このクズを牢屋へぶち込んで来るように告げると、まるで天国から地獄に落とされたような表情をクズがするではないか。


 その表情を見て我は少しだけすっきりする。


 そもそもこれほどの大失態をやらかしてしまった上にその失態に後始末もせずに帝国、この皇帝である我の顔に唾を吐きかけた罪が許されると本当に想っていたのであれば本当に救いようのないバカなのであろう。


「おい貴様っ!! 平民ごときが貴族である私に触るんじゃないっ!!」

「うるさい黙れっ!! ガイウス皇帝陛下の命令であるっ!! 黙って従えっ!!」

「ふざけるなっ!! ガ、ガイウス皇帝陛下っ!! 考え直してくださいっ!! こいつが言っていることは全てあり出鱈目でございますっ!! ガイウス皇帝陛下っ!!」


 そしてクズは我の名前を叫びながら連れていかれ、扉が閉まる音が玉座の間に響きいた後、静まり返る。


「さて、確か冒険者ランクS級であるゴーエン一人では通用しなかったという話であるが、当時はゴーエン一人であのカイザルというゴミと戦ったのか?」

「はい、そのようですっ!!」

「そのようです・・・・、だと? 実際に戦っていたのか、戦っていたと思うのか、どっちなんだ? 貴様は我に要らぬ時間を取らせるつもりか?」

「い、いえっ、ま、間違いなくっ、ゴーエン一人で戦っておりましたっ!!」


 残っていた兵士に当時の事を聞いてみるのだが、なんでこう我以外の人間はこうもバカばかりなのであろうか? むしろだからこそ神は我を皇帝にして帝国を導かせようとしたのであろうが、しかしながらここまでバカばかりであると頭が痛くなる。


「なるほど。 それを考えるとカイザル側にはゴーエンレベルの戦力を持っている敵がいたのであろう。 ちなみに一体相手はどのような手の者であった?」

「た、戦ったのはカイザル一人でございますっ!!」

「馬鹿かお前は? カイザル一人の訳がなかろうっ!!」

「ひぃいいっ!!」


 本当に、なぜこいつらはこれほどまでにバカなのだろうか? 普通に考えれば魔術も碌に扱えない出来損ないであると報告書にも書いてあったような雑魚が一人でゴーエンに勝てるわけがなかろう。


 何故そこまで考えようとしないのか、バカはこれだから困る。

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