第60話 自業自得

「ふ、ふざけるなっ!! それをして殺されるのは俺なんだぞっ!! そして、お前も皇帝陛下に対してそんな事をしてただでは済まない事になるんだぞっ!? 今からでも遅くないから考え直せっ!!」


 そして俺の言葉に反応したのが一人の貴族であろう四十代ほどの人物である。


 という事は最初に馬上から引きずり落としてぶん殴った奴はこいつの息子か何かであり、この機会を息子の手柄にしようとでも思っていたのであろう。


 確かに表面上では公爵家であるクヴィスト家の長男は出来損ないと有名であったし、その魔術も碌に行使できないバカ息子一人を皇帝の前に差し出すだけの簡単な任務に見えた事であろう。


 ただ、危険があるとするならば俺が皇帝陛下にここまで傲慢な態度で返事を返した事からしても俺の後ろには俺を操っている闇の組織か何かがいて、俺を操っているかもしれないということくらいであろうか。


 それゆえにこの人数を集めたというのもあるだろう。


 そして、今回の任務でコイツはこれほどの人数を動かして俺を捕まえて皇帝陛下の前へ突き出すことが出来ない場合は間違いなくあの暴君に殺されてしまうであろう。


 自分の命がかかっているため必死になるのは分かるのだが、だったら初めから他国へ逃げればいい話である。


 それこそ、俺を捕まえに行くと見せかけて逃げていればまだ帝国から家族ともども逃げる事ができたのかもしれないが、現段階まできてしまうと今度はこいつを逃がしたとなると周囲の人間が皇帝陛下に殺されてしまいかねないため全力で逃げ出さないように見張るだろう。


 こいつは目先の利益や貴族という権力と、自分や家族の命を天秤にかけて利益や権力を選んでしまった自業自得である。


 確かに、まさか俺がゲームの能力を引き継いでいたなど誰も想像など出来よう筈はないかもしれないのだが、それはもうコイツに運が無かったという事であろうし、周辺調査だけではなくしっかりと、俺の事について調査をしていればこんな事にはならなかったと考えると、はやり自業自得としか言いようがないし、俺に関係ない奴が自分の詰めの甘さで死のうがどうでもいい。


「じゃぁ、もう用がないならば俺は帰るぞ」

「ま、待てっ!! 待てと言っているっ!! おいっ!! 誰かこいつをひっ捕らえろっ!!」


 そして俺は踵を返して家へと戻っていくのであった。





「それで、こいつはカイザルを捕らえて来ることが出来なかった為に逃げようとしたところを捕縛したという事か?」

「はっ!! そうでありますっ!!」

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