第59話 見逃してやるけど?

「し、しかし子は親を敬うものであろうっ!?」

「そうだな、だったら何故父親であるお前は俺に対して無関心どころか日々虐めて来たんだ? 親であるお前が子供を無条件で慈しむ事が出来ないにも関わらず、何で子供が親を無条件で敬うものだと思っているんだ?」

「そ……それは…………っ」

「そもそもお前、自分の父親を殺しただろ? 確か、お前の金遣いの荒さや領民に対する態度、権力を振りかざして好き三昧するお前を勘当して、親戚である甥と養子縁組して継がせようとしている事が分かったお前は自分の父親を殺してクヴィスト家を継いだんだろう?」

「そ、それはこの優秀な俺を見抜けずに使えない甥にクヴィスト家を任せてしまったらクヴィスト家が潰れてしまうと思い、クヴィスト家を守る為にはアイツを殺すしかなかったんだっ!!」


 しかしながら未だに『子は親を敬うもの』であると宣うので、俺は更に父親へ今まで俺をさんざん虐めて来て敬えるはずがない事、そもそも父親であるエドワードも自分の欲望の為に親を殺した事を話すのだが、それでも父親は直ぐわかる嘘で良い訳を言い始める。


「あっそ。 それじゃぁ俺もクヴィスト家を守るためにお前を殺してもいいという事だな? 俺が何も知らないとでも思っているようなのでこの際教えてやるけど、お前が今まで私利私欲の為に散財してきたせいでクヴィスト家の資産は三分の一にまで減っている事、その為ここ最近はお金が無く、金貸し屋から多額の金銭を借りて見栄の為だけに宝石や絵画などを買っている事、そして極めつけは闇ギルドへ賄賂を贈っている事などなど、全部調べは付いているんだよ。 だからお前がクヴィスト家を守るために自分の父親を殺したと言うのであれば俺もクヴィスト家を守るためにお前を殺しても良いよな? あ、ちなみにこれらはお前が余りにもバカだったお陰で直ぐに証拠などは集まったよ」


 そしてここまで言ってようやっと父親は自分の置かれている立場に気付いたようで膝から崩れ落ちてしまう。


 むしろもうここまで来たら自分の立場に気付けないんじゃなかろうかとも思い始めたのだが、どうにか気付けたようである。


「それで、こいつらは俺の人質にはならないという事が分かったと思うんだがどうする?」


 そして、俺の家族(特に父親)の立ち場が分かったのは父親だけではなく、俺を捕えようとしてきた奴らも同様に気付けたようで、俺の家族を拘束している者はいなくなった。


「まだ俺に噛みついて来る奴がいれば相手をするんだが、いない様であれば今日のところは『ガイウスとかいう皇帝の命令で来ており自分の意志ではない』という事で見逃してやるけど?」

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