第58話 一応忠告はしておく

 そして俺は周囲を見渡して他に噛みついて来る奴がいるかどうか確認を取ると、父親の首に剣の刃を付きたてている奴が俺に向かって噛みついて来る。


 ゴーエンとのやり取りを見てまだ噛みついて来る奴がいるのかと思いつつも殺したら殺すと一応忠告はしておく。


 こんな奴らでも俺の代わりに領地運営や貴族としての立ち回り(パーティーへの参加など)をしてもう為の手足としてはまだまだ使える為、アイツらから解放してくれと言ってくるまでは俺の為に使ってやろうとしている大事な駒である事は変わりない。


 その俺の駒を殺すというのであれば、当然俺は駒を殺した奴を殺すつもりである。


「おいっ!! 父親に対して『殺したければ殺せばいい』というのはどういう事だっ!? お前には父親に対する敬意がまったく感じられんっ!! 息子である以上父親を助けるのが当たり前であろうっ!!」

「うるっせぇぞジジイッ!! ホントにお前の首を切り落とすぞっ!?」


 しかしながら俺のこの返答に父親であるエドワードは納得いかないようで、首筋に剣の刃を当てられているにも関わらず俺に向かって怒声を上げるではないか。


 昔から公爵家としてチヤホヤされて来たが故に怒りの感情をコントロールするのが苦手なのだろうが時と場合というものがあり、今この場でエドワードの殺生与奪権を持っている男性を無視し、そしてその男性を無力化できる俺に向かって怒鳴り散らすあたり、きっともう矯正しようがない程のバカなのだろう。


 そして当然のように殺生与奪権を持っている男性にうるさいと怒鳴られる姿を見ると、我が父親ながら本当に恥ずかしいと思ってしまう。


「いや、どうもこうも父親が死んだところで俺に被るデメリットは無いに等しく、弟や母親の仕事量が多くなるのと、とりあえず領地経営はまだ弟には任せられないので弟が問題ないと思えるくらいに知識を蓄えるまでは俺が領地経営しなければならない手間が増える程度だしな。 というか、領地経営に関しては将来的に才能がある奴隷を買ってそいつに任せようと思っているわけだし『父親がいなくなるのが少しばかり早くなるな』くらいにしか思わんな。 まぁ、殺されたら殺されたで仇くらいは取ってやるよ」


 父親は俺がここまで言ってようやっと自分の価値が今どれくらいの価値しかないのかというのに感付いたらしく、先ほどまでの威勢は無くなり、みるみる顔が青ざめていく。


 そもそも父親だから息子は助けるのが当たり前だという価値観もどうせなのでこの機会に一緒に壊しておく事にする。

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