第55話 冒険者ランクS級



 貴族であれば噛みついて良い相手くらいしかりと判断しないといけないという良い経験になったに違いない。


 そして彼が言っていた事が本当であれば爵位を継いで三日しか経っていないという事は、まだ俺以外に喧嘩を売る相手を間違えるという事も無さそうなので、失敗する前に知れた事を感謝してして欲しいくらいだ。


「それで、他に俺にボコられたい奴はどいつだ? なんなら全員纏めてかかって来ても良いんだが? そっちの方が俺としては時間もかからない為ありがたいんだがな」


 先ほど貴族が俺によってぶっ飛ばされた光景を見た後では流石にこの人数でも腰が引けてしまっているのであろう。


 なかなか名乗り出る者や襲い掛かる者がいない中、そんな状況を打開するかのように一人の男性が俺の前に出てくる。


「なぁ坊主。 悪い事は言わないからこのまま俺達に捕まってくれないか? そうすればお前の家族の命だけは助かるだろう」


 そして俺の前にまで出て来た男性は、少しばかり高圧的な声音でそんな事を宣うのだが、そいつの言葉を要約すれば『お前の命さえ差し出せば家族まで死ぬ事はないだろう』という内容であり、当然はいそうですかと了承できるような内容では無い。


「はっ、俺の命で家族が助かるから大人しく連れてかれろってか?」

「そうだ。 そうすればまだクヴィスト家は帝国に残る事となる。 しかしながらお前がここで素直に応じなければ場合は家族を皆殺しにしなければならず、そしてお前は皇帝陛下によって間違いなく殺されるであろう。 自分の撒いた種だ。 そのケツは自分だけで拭け。 関係ない家族に巻き添えにするなと言っているのだ」


 そして件の男性は俺の前で偉そうに説教し始めるではないか。


 先ほどのゴミ貴族と違ってまだ話ができそうな態度だからとこの男性の話を聞いてみたは良いものの、聞く価値も無い、俺の家族の為に一人で死ねというゴミのような内容であった。


「ちなみに俺がお前の案を断るとどうなる?」

「冒険者ランクS級である俺がお前の手足をもぎ取ってでも連れて行くだけだ」


 俺がこの男性の案を断った場合どうなるか聞いてみると、男性は胸元にある金色のプレートを見せびらかしながら俺の手足をもぎ取ってでも連れて行くと言うではないか。


「ふーん、冒険者ランクS級ねぇ。 まさかその冒険者が傭兵みたいな事をするとは、帝国の冒険者も落ちたものだな。 ま、お前みたいな雑魚が冒険者ランクS級だってんだからとっくの昔に帝国の冒険者ランクが地に落ちていたんだろうけど」


 

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