第54話 もう開き直るしかない

 しかしながらシシルを奴隷にしてから行った自家発電は一回だけであり、それを見られていた確率は限りなく低いだろう。


 それに万が一自家発電を見られていたとしてもシシルの記憶を消すことができない為もう開き直るしかない。


 そして見られていないと仮定するよりも見られていたと仮定してこれから過ごした方が万が一見られていた事がシシルの口から告げられた時に、その時受けるであろう精神的ダメージは後者の心持ちの方が少ない為、俺はこれから自家発電をシシルに見られたと仮定して生きていく事を決意する。


 これ程嫌な決意をした者が前世今世合わせてかつていたただろうか?


 流石にいくら何でも惨めすぎるとは思うもののこの件に関しては、全ては身から出た錆であり俺がシシルを奴隷にした結果である為甘んじて受けよう。


 そしてこの憂さ晴らしは、クヴィスト家を取り囲んでいるハイエナたちですればいいだろう。


 そんな事を思いながら俺は玄関の扉を開けて外へ出る。


「おやおや、護衛も付けずに一人で出てくるとは勇敢なのかバカなのか。 恐らく後者なのだろうなぁ」


 外へと一人で出て来た俺を見て今回の部隊を率いている貴族であろう者が馬の上から俺を見下しながらそんな事を宣うのでとりあえずソイツに近づくと足を掴んでそのまま引きずり落とす。


「おがっ!? 痛っ!! き、貴様っ!! この俺を誰だと思ってやがるっ!? クヴィスト家を引き継いでいないどころか、聞いた話によればクヴィスト家を引き継くのは弟であるダグラスであると決まったそうではないかっ!! それは即ち貴様は平民、良くて辺境貴族の婿養子という未来しかない半端者であり、そんな半端者が三日前に正式に伯爵の爵位を父親から受け継ぎ、正真正銘貴族となったこの俺に対してそんな態度を取ってただで済むと思っているのかっ!?」

「長げぇわ。 そんなに長いと無能がバレるぞ?」

「ぐうぇっ!!」


 そして馬上から引きずり落とされた自称貴族は腰をさすりながらもなんとか起き上がりつつ、一言『貴族である俺にそんな態度を取るとは何事か』で終わるような内容を長々と喋っているので俺は一言この無能に『長く喋ると無能がバレるぞ』とアドバイスをしてあげた後に拳に魔力を込めてぶん殴る。


 するとカエルが潰れたような声を出しながら吹き飛んで行く。


 衝撃の瞬間魔術で防御していなかったのだが大丈夫だろうか? とは思うものの俺に噛みついて来たアイツが悪いので自業自得であろう。


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