第53話 自家発電もできやしない


 なのでガイウスと違って優しい俺は一度彼らに俺の邪魔をするのかどうか、そのつもりがないのであれば直ちにここから立ち去る旨を聞いてから殴り飛ばそうと思う。


「あら? 家族を助けに行くのかしら? あれほど酷い事をされてもやっぱり血の繋がった家族は見捨てられないのかしら?」


 そんな俺を見てシシルはそんな事を言うではないか。


 どこをどう見ればこれから俺が人質に取られてしまっている家族を助けに行くように見えるのか小一時間ほど問い詰めたいところでははあるものの、そんな時間は無いためここはグッと堪えることにする。


「は? そんな訳ねぇだろ。 むしろ血の繋がった家族だからこそ許せない事も多いと俺は思うんだが?」

「それを聞いて安心したわ。 もしあなたがあのゴミクズたちに対して今以上の情けをかけようとしたのであれば私はご主人様の代わりにあの家族たちを殺していたかもしれないわ。 それも、拷問してから」

「何さらっと恐ろしい事を言っているんだよ? それにあの家族に対して報復を与える事が許されるのは俺だけの特権の筈だし直ぐに殺して楽にさせるなんてもっての他だ。 あいつらには尊厳やプライドといったもの全てを、ゆっくりじっくり、それこそ俺にしてきたように奪い去るまでは生かすし、殺すかどうかの判断はその時に下す。 当然あいつらが死にたいというのであれば殺さないという方を選ぶかもしれないし、鬱陶しいから殺すかもしれない。 とりあえず今はあいつらに常に殺生与奪権は俺側が持っているというストレスを感じながら生きていけばいい」


 しかしながらここで死ぬのならばそれがあいつらの運命でもあるのであろう。


 流石の俺もそこまでは面倒見切れないし、その時は自分の運のなさを呪って死んでほしい。


「あぁ、なんて鬼畜の所業なのでしょう……。 ご主人様からこれほどまで強く思われて、羨ましいですわね……」


 そしてシシルは先ほどの俺の話を聞いて恍惚な表情で羨ましいと言うではないか。


 普通にドン引きなんですけど?


 そんなド変態を華麗にスルーしつつ、俺は玄関から逃げも隠れもせずに外へと出ると、シシルは「では私は影の中からご主人様を見守りますね」と言いながら俺の影へと潜っていくではないか。 


 これって、俺が誰もいないと思って自家発電しているときも影の中からのぞき見する事ができてしまうという事ではなかろうか。


 今回のごたごたが終われば真っ先に何かしらの対策をしなければ安心して自家発電もできやしない。


 というか既に見られていたのならば最悪だ。


 

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