第51話 何としてでも我の前に連れてこい




「……なんだこれは?」


 我はカイザルではなく手紙だけが来たことでただでさえ怒りを抑えるのにかなり大変であるにも関わらず、その手紙に書かれていた内容を読み抑えていた怒りを抑えきる事が出来ずに静かにキレ始める。


 手紙の内容が本当であればカイザルはどうやら不敬罪で死にたいらしい。


 その我の機嫌の悪さと殺気を感じとったのだろう。


 我の周囲にいる護衛や妾、そして手紙を我に渡してきた使用人は直接俺の怒りを向けられていないにも関わらず恐怖で震えている姿が目に入ってくる。


 特にカイザルからの手紙を我へ渡してきた使用人に至っては顔が真っ青に待っているではないか。


 おそらく我の怒りの元凶である手紙を持って来たという立場上『こんな手紙を持って来たコイツも殺せ』と我が言うのではなかろうかとでも思っており、生きた心地がしていないのであろう。


 なんと可哀そうに。


 これもそれも全てはこのカイザルのせいだろう。


 これほどまでコケにされて許せる筈がない。


 そして我はカイザルから届いた手紙を握りつぶすと、床に捨て立ち上がり、踏みつぶす。


「ここまで皇帝である我をコケにされたのは産まれて初めてだ……っ」

「もっ、申し訳ございませっ! 申し訳ございませんっ!!」

「よいよい、お前が悪い訳ではないからな。 悪いのは全てこのカイザルという頭の悪いバカであってお主が悪いわけではない どうせ裏で糸を引いているものの傀儡にされているとも気づかずに偉くなった、それこそ皇帝である我の呼び出しを無視するどころか失礼であると難癖付けれるほど偉くなったと勘違いしてしまったカイザルが概ね悪いのだからな」

「ありがとうございますっ! そうですっ!! すべてはこのカイザルという奴が悪いのですっ!!」


 そして我がそう言ってやると、手紙を持って来た者は明らかにホッとすると私の言葉に賛同し始める。


「しかしながら我を怒らすような手紙を持ってきたというのは事実であるからな……」

「……へ?」


 だからと言ってこんな手紙を我のところまで持って来たという罪が消えるわけではない。


 普段の我であれば真っ先に殺していたのだが、今ここでコイツを殺すのは簡単であろうが、こいつを殺したところでカイザルが死ぬわけではないのでここはグッと堪える。


「しかしながらここで貴様を殺すのは早計というものだな。 そんな貴様にはチャンスをやろう。 どんな手段を使ってでもいい。 生きてさえいればどんな姿であってもいい。 それこそ手足全て切り落とした姿でもいい。 このカイザルというバカを何としてでも我の前に連れてこい。 そうすれば貴様の罪は帳消しにしてやろう」


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