第47話 頭がどうにかなりそうな程の怒り

「き、貴様っ!? 口の聞きかt──」

「あ、いや、そ、その…………も、申し訳ございません……っ」

「リリアナ様っ!?」


 私がリリアナ様の手を煩わせる前にあのクズに対して先に忠告したのだが、あのクズは謝り道を譲るのではなく、私の事を『飼っている犬』と称して躾が出来ていないと忠告した私ではなくリリアナ様に言ってくるではないか。


 その事を注意しようとしたらなんとリリアナ様の方が頭を下げて謝罪するではないか。


「止めてくださいリリアナ様っ!! 高貴なあなた様が頭を下げる必要などございませんっ!! 頭を下げるべきはあの目の前にいるクズでございますっ!!」

「お止めなさいっ、オリヴィアッ!!」

「で、ですがっ!!」

「聞こえませんでしたの? お止めなさいと私は申したのですが? 今は耐えるべき時です……っ」

「ぐ……っ。わ、分かりました……っ」


 流石に私が敬愛する主であるリリアナ様がこんなクズに頭を下げて謝罪している姿は見ていられるものではないのですぐさま止めるように言うのだが、リリアナ様は私の言葉を聞くどころかむしろか嗜めてくるではないか。


 しかしながらリリアナ様の悔しさはその噛みしめた唇から容易に想像できる為私は腸が煮えたぎる程の怒りをグッと堪えて了承する。


「おい」

「…………何でしょうか? 私たちは今忙しいのでクズが気安く話しかけてこないでくれませんか」

「いやいやいや、分かりましたって言うのは良いけど分かったなら俺に対して偉そうな態度を取った事を謝罪してさっさと道を譲れや。 お前の不出来のせいでそこの尻軽女は俺に頭を下げて道を譲ってくれてんのに、お前がその態度を改めない限りは頭を下げさせ続けるけど?」

「ぐぎぎぎ…………っ! も、申し訳ございません……でした……っ」

「はっ、駄犬は駄犬なりにやればできるじゃねぇかよ」


 リリアナ様が頭を下げ、私が矛を収めただけではこのクズは納得いかないのか、私に対して謝罪と、道を譲るように言ってくる。


 なんだこれは? どうしてこのクズがこれ程までにリリアナ様へ横柄な態度を取れるようになったのだ? 


 私は頭がどうにかなりそうな程の怒りをなんとか抑えて考える。


 たしか、あの日は一応ダグラスが嫡男となるデモンストレーションとして兄であるこのクズ、カイザルとの模擬戦をやり、その模擬戦で勝った方がクヴィスト家を引き継ぐ事というのであったのだがもしかしてこのカイザルがあの、学園内トーナメント戦を準優勝して現在ランキング四位であるダグラス様を倒したとでも言うのだろうか?


 

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