第46話 犬の躾も碌にできないのか?
しかしながらいくら何かがおかしいというのが分かっていてもその何かが分からないのだから対処のしようがない。
私はリリアナ様の側仕えであり、それはリリアナ様の護衛も当然含まれているし、身の回りの世話も含まれている。 そして当然リリアナ様が精神的に弱っている時にはリリアナ様を精神的にケアする事も当然含まれているのである。
それは私の家系だからこそ任された立場というのもあるのだが、例え任されていなかったとしても私はきっとそうしていたであろう。
リリアナ様はその美しさは勿論のこと、慈愛の心も持っており、正に聖女と呼ぶに相応しいお方であるからだ。
聖王国では一人『聖女』と呼ばれている女性がいるようなのだが、そんなものは我が帝国にリリアナ様という本物の聖女がいる限り聖王国の聖女は偽物であると言わざるを得ない。
そして側仕えであるにも関わらずリリアナ様の新しい婚約者であられるダグラス様がいる上に開催場所はそのダグラス様の実家であるクヴィスト家で行うから大丈夫というリリアナ様の言葉を信じて久しぶりの休暇をいただいてしまったあの日の私を悔いる事しかできないというのもここ最近私のストレスとなって圧しかかってくる。
何が原因かも分からないし、当日いくら宮廷魔術師や帝国軍から一名ずつ腕の立つ者が護衛に来るから大丈夫だろうと楽観視して参加しなかった事、リリアナ様本人やあの日いた者達に聞いても何も話してくれない為一体どうすればいいのかと考えていたその時、私たちの進行を邪魔するかの如く廊下の真ん中を堂々と歩いて来るカイザルが目に入って来るではないか。
ただでさえ私は苛ついているのに、こんな時に限って今一番会いたくないクズに出会うだなんて。 しかもそのクズは、いつもであれば私達と出会うとすぐに廊下の端に寄って道を開けるのだが今日に限って端に寄る素振りも見せず、寧ろ私達を見下すかのような態度で近づいて来るではないか。
以前まではまだリリアナ様の婚約者という事で大目にみていたのだが、今は既にこのクズとの婚約は解消されており、ダグラス様という素敵な殿方と新たにリリアナ様は婚約をしているのである。
婚約者でなくなった以上このクズの態度は目に余るものがり、流石に躾という名の罰が必要であろう。
「おい貴様っ!! リリアナ様が歩いているにも関わらず何故その進行を妨げるように道の真ん中を歩いているのだっ!! 不敬にも程があるぞっ!! しかもその太々しい態度、どうやら貴様には躾が必要のようだなっ!?」
「あ? おいリリアナ、これはどういう事だ? 自分の飼っている犬の躾も碌にできないのか?」
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