第44話 下腹部が濡れてしまったほどだわ

「何を言っているんだ? この発情駄エルフが」

「だって仕方がないでしょう? 私の前であんな綺麗な魔術や暴力という言葉そのもののようなドラゴンを召喚したりしたご主人様が悪いのであって私は全く悪くないと思いますけど?」


 そしてこのエルフ奴隷はぬけぬけとそんな事を言うではないか。


「いやいやいや、それでもシシルは俺の奴隷から解放されたいのではないのか? しかも今俺の奴隷になっているのはある意味で俺への嫌がらせの為になっているわけで、それほどまでに嫌っている奴の子供を欲しがるとか、たとえ魔術の行使が奇麗だったからとかいう理由で子供を欲しがるとか意味が分からないんだけど?」


 そう、そうなのだ。


 そもそもこいつは俺の事を、人間という種族を嫌っており、その人族である俺の奴隷になるという屈辱を受けてしまったせいで捻くれてしまったのか奴隷という立場から解放させてやると言っても、まるで反抗期の娘みたいに親がこうしなさいと言ったものは例え自分が好きな物事でもとりあえずは否定してしまうかの如く、逆に嫌がってしまう程嫌っていたシシルが急に手のひらを反して子作りをしようと言ってくるのである。


 おかしいと警戒するのが普通であろう。


「まったく、ご主人様は我々エルフの事を何も分かってらっしゃらないようですね」


 そんな俺にシシルはまるで出来の悪い生徒を見るような表情でそんな事を言うではないか。


 その表情でそんな事をいわれると普通に腹が立つので一発殴ってやろうか? と思ってしまうのだが、それだとただの自分の感情をコントロールできない野蛮な人間なのでここはぐっと堪える。


 俺はスマートな人間なのだ。


 むこうから噛みついてこない限りは俺からは反撃はしない。


 一応シシルからは今のところうざいだけで俺を貶めてやろうなどという感情は感じないので殴ることでもないだろう。


「いいですか? ご主人様。 エルフというのは人間種と違って容姿ではあまり魅力を感じないんですよ? それは人族と違ってエルフはみな美しい顔立ちであるため容姿で優劣を付けにくいからという為なのですが、故にどこを見るようになったかというとその者が魔術を行使する美しさや威力などを見るようになったのです。 そして昨日私が見たご主人様の魔術は今まで見てきたどのエルフよりも圧倒的に美しく、思わず下腹部が濡れてしまったほどだわ」

「いや、だからといって俺が人族である事には変わりないだろう? わざわざ見下している種族の子供を欲しいと思うものなのか?」

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