第39話 俺とお前は家族であろう?

 

 すると周囲は暴風のような魔力が吹き荒れると、その吹き荒れる魔力の発生源から身の丈十五メートルの巨躯を持つ巨大な黒竜が出現するではないか。


 流石課金従魔ガチャを天井まで回して手に入れた最高レアリティーの従魔の一匹である。


 召喚されるときもゲームのエフェクト同様に中二病をくすぐるかっこよさであり、控えめに言って最高である。


『我が主よ、我を召喚していただきありがとうございます。 して、我は今からこの馬鹿どもを蹂躙すればよろしいかな?』


 その黒竜は俺を見ると頭を下げて忠誠を示すと、ついで物騒な事を言うではないか。


「いや、流石にそんな事をしたら俺がこれから罪悪感に悩んで生きる羽目になりそうだからやめてくれ」

『なるほど、我が主人がそういう考えならば仕方あるまい。 我はかなり腹が立っていたので主人さえ良ければ嬉々としてこいつらを蹂躙して、貴族がこんな馬鹿どもしかいないのであればこんな国なんかついでに潰してしまおうかと思っておったのだがな。 もしその気になった時はぜひ我を呼び寄せてほしいぞっ』


 いや、何この黒いトカゲは貴族連中や王女がいる前でなんて事を言うんだよっ!?


 これでは俺が国家転覆を狙っているとしか見えないではないか。


 流石に先ほどここにいる貴族たちや王族であるリリアナへ一方的に契約魔術を行使して『ここであった事は他言無用』と伝え、そう契約したのだから外に漏れる事はないだろう。


 だからこそ俺は黒竜ヘイロンを召喚してこいつらの戦意を喪失させてやったというのに。


 しかしながらヘイロンの先ほどの言葉は貴族やリリアナにはかなり有効打であったようで、先ほどまでの威勢は綺麗さっぱり消え失せ、大人しくなった事に関してはかなりありがたい。


「おぉ、さすが我がクヴィスト家の長男だっ!! 俺はお前が大成すると信じていたぞっ!! しかしながらあのダグラスをまるで赤子のように捻り潰すだけではなく、これほどの巨躯を持つ、それこそ神話に出ていてもおかしくないほどの黒竜を使役していたとはっ!! なんで今までこの事を父親である俺に黙っていたんだっ!? 水臭いじゃぁないかっ!! 俺とお前は家族であろう?」


 しかしながらただ一人、俺の父親だけは何故か黒竜にビビるどころか目を輝かせ、嘘だとすぐ分かるようなお世辞を並べながら近づいてくるではないか。


 こいつの頭はどうせ『これで俺が帝国を、そして世界を統べることができる』などとつまらない事を考えていることが手に取るように分かってしまう。

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