第34話 ゴミでしかない

 

 そして俺がダグラスへと距離を縮める度に、ダグラスは後退りをして俺から距離を取ろうとするでは無いか。


 しかしながらそんな事には構わず俺はダグラスへと歩みを進めていくと、後退りすることに慣れていないのかダグラスは途中でバランスを崩して転んでしまう。


「人に何か好意的な事をしてもらったら『ありがとうございます』って平民の子供でも言える事だぞ? お前は平民の子供ですらできることができないのか? 本当に情けないやつだな」


 そして俺はこの絶好の機会にダグラスへと攻撃するでもなく、顔を近づけて一般的な常識を優しく教えてあげると、顔を真っ赤にして俺を睨みつけてくるが、反撃をしてくる気配もなくただ睨みつけてくるだけである。


「しかし、そんなゴミみたいな魔杖剣で俺に勝とうとするのは我が弟ながら滑稽だよな」

「あ? どういう事だよ?」


 都合が悪くなると黙っていた弟なのだが、魔杖剣の事になると早速噛みついてくる。


 確かにこの世界ではクヴィスト家が持つ魔杖剣は帝国内でもかなり上位の武器の一つであるので弟の気力がここぞとばかりに復活するのも分かるのであが、それはあくまでも帝国内だけの話であり、ゲーム内ではそもそも魔杖剣の時点でどっちつかずの器用貧乏な武器でしかないのである。


 ダグラスが今持っている魔杖剣はそんな武器である上に無課金ガチャで手に入る武器の中での一番レア度が低い武器と比べてぎりぎり同等レベルかという程度の武器でしかないのである。


 ゲームとしてのアイテムで考えた場合クヴィスト家が大金叩いて購入し、模擬戦前では自慢げにしながら俺に見せびらかしてきたこの魔杖剣はゴミでしかない。


 素材にすらならない上に進化させることも出来ないのならば持っているだけでもストレージを圧迫するだけでしかないため即武器屋に売りつけるレベルでゴミである。


「そうかそうか、お前この魔杖剣が羨ましいんだろっ!! それならそうと初めから言えやっ! まぁ、言ったところでお前になんか渡さないんだがなっ!!」


 そしてダグラスは調子を取り戻したのかゆっくりと立ちあがると、今まで怯えていたのが嘘のように俺へマウントを取り始めるではないか。


 こいつ、俺の言葉をちゃんと聞いていたかすら怪しいんだが、聞いていたとしても俺の言葉をちゃんと理解できてすらいない可能性もあるのでこんな奴に今まで上から目線でマウントを取られ、見下されていたのだと思うとなんだか情けなく思えてくる。


「お前、俺の話をちゃんと聞いていたか? そんなゴミを俺が欲しがるわけがないだろう?」

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