第33話 まるで礼儀が成っていない
その光景を見た俺は即座にダグラスへと駆けると足払いをして転倒させ魔術行使に集中できなくする事で物理的にダグラスの魔術をキャンセルさせる。
「へぶっ!? 貴様、何をしやがるっ!!」
「何をしやがるってお前、そんなに魔杖剣を光らせて魔術を行使しようとするとか『いまから僕は魔術を行使しますっ!!』って言っているようなもんだろうが。 模擬戦でそんな事をしたらどうなるかすらも考えられない程バカなのか? こんなのが俺の弟だなんて本当に情けない」
「くっ、言わせておけばっ!!」
そしてこける時に魔杖剣を手放していたダグラスは尻もちをついた状態で魔杖剣へと手を伸ばそうとするので俺はその手を踏みつける。
「なぁ弟よ。 どこまで兄である俺をバカにすれば気が済むんだ? 敵が一度手放してしまった武器を『はいそうですか』と簡単に拾わせるわけがないだろう?」
「痛てぇっ!! 痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!! その足を退けろっ!! こんな事をしてただで済むと思うなよっ!!」
「あっそ。 じゃぁ退ける代わりにその手を踏み砕くわ」
「へ? な、何で? あぎゃぁぁぁあああああっ!!!!」
「何でって、そりゃそうだろ。 でもまぁ、お兄ちゃんは優しいから回復させてやるよ」
なんでせっかく捕まえたにも関わらず手ぶらで解放させなければならないのか。
とことんコイツの頭はお花畑なのだろう。
そして俺が相手であれば同じことをしていただろうことは容易に想像できる為俺は容赦することなく弟の手を踏み潰すと、汚い声で叫ぶではないか。
流石にこれではうるさすぎるので優しい俺は弟の手を回復させてやる。
「ほら、返してやるよ。 ただでさえ弱いお前はこれが無いと何もできないもんな?」
優しい俺は弟を解放すると共に魔杖剣も返してやる。
その突き出された魔杖剣を弟はふんだくるように奪うと一気に俺から距離を取るではないか。
まるで礼儀が成っていない。
「なぁ弟よ。 潰された手を治してもらい、落ちた魔杖剣まで拾ってもらった相手に何かいう事があるだろう? 感謝の言葉の一つも言えないようでは赤ちゃんからやり直すべきだと俺は思うんだが?」
「う、ぐぅ……っ」
そして俺は弟を煽るのだが、先程手を潰された事でようやっと俺の事を警戒し始めたのか怒りで言い返しそうになるのをグッと堪え、努めて冷静に成ろうとする弟が見える。
しかし、流石に模擬戦が始まってしまった今となってはもう遅すぎると言わざるを得ないのだが。
そして俺はまるでネズミをいたぶり遊ぶ猫のように、弟へと歩みを進めて行く。
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