第25話 腐っても鯛
朝起きて朝食をとる為にリビングへと向かう途中、家族との食事はずらして向かっている為既に食事を食べ終えて自室に戻る途中の弟と出くわしてしまったようである。
家族が食べ終わった頃を見計らったつもりだったのだが少しばかり早かったか。 まったく、最後の最後まで面倒くさい融通の利かない弟である。
そして弟のダグラスはそう言うと俺の腹を殴ってくるではないか。
以前であればその一撃て悶え苦しんでいたのだろうが、ゲームのステータスを引き継いでいる今の俺では蚊に刺された程度にしか感じない。
しかしながら今日は今までの鬱憤を晴らす絶好の機会なのだ。
ここで変に耐えてしまってこのバカに変に勘繰られでもした結果、今日やるはずだった俺との決闘を無かった事にされては目も当てられないので俺は以前のように腹を抱えて蹲り、ダグラスの攻撃を効いているフリをする。
「うん? 一瞬だけ反応が遅いような気がしたのだが……」
「おい何をしている。 今日はお前の晴れの舞台なんだぞ。 皆が揃う前にやる事は山ほどあるんだからこんなグズに時間を割く余裕はないぞ?」
「は、はい。 お父様。 …………流石に気のせいか。 そもそもあのクズに限って俺の攻撃が効いていないなんて事はないしな。 普通に考えれば手加減したとはいえ俺の攻撃をあのクズでは耐えられる筈がねぇしな」
しかしながら俺の反応が一瞬だけ遅かった事をダグラスはめざとく勘づいたようで疑問に思ったようだが父親の急かす声に、俺の反応が遅かった事について考える事を止めてそのまま俺の視界から消えてくれる。
「あ、危なかった……。 一瞬だけ迷ったんだが、まさかその一瞬の違和感を感じ取る事ができるとは、腐ってもこのクヴィスト家の英才教育を受けているだけの実力はあるって事か。 どうやら弟の事だからと見下しすぎていたようだな」
なんだかんだで血筋だけ見れば帝国屈指の血筋であり、そしてその血を引く者に金を惜しまず英才教育をさせているのだから腐っても鯛という事なのだろう。
とはいってもこれから気をつける必要などなくなるので今となってはもはやどうでも良い情報であると言えよう。
「ご、ご主人様……っ わ、私がぶん殴りにいっても良いかしら? 良いわよね? なのでそこを退いてちょうだい。 ぶん殴りに行けないじゃないのよ」
そんなどうでも良い情報なんかよりも今は隷属関係による魔術の繋がりを利用し、転移の魔術によって現れた怒り狂う寸前の奴隷様を落ち着かせる情報の方が切に知りたいわけで。
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