第24話 完璧な奴隷だったのに
「あら、それは頼もしい事で。 ちなみに私にも何か手伝えるような事はないかしら?」
そしてシシルが明日どうするのかと聞いてくるので、弟と両親をぶん殴ると答えると、我が奴隷様の口から『明日手伝える事はないか?』と聞いてくるではないか。
これは明日槍でも降ってくるのではなかろうか。 もしくは何か企んでいるのか。
むしろ何か企んでいる方がシシルらしいのでそのままストレートに聞いてみる事にする。
「いきなりどうしたんだ? 劣等種である人族である俺の手伝いを率先して手伝いたいだなんてシシルらしくもない。 何か企んでいるんじゃないのか?」
「そんな、こんなにも可愛らしい奴隷を捕まえて『何か企んでいるんじゃないのか?』だなんて、ご主人様には人の心があるのかしら。 でもそうね、ご主人様は腐っても私を奴隷に落とすだけの知能と魔術的な知識があったからこそこの私を奴隷に落とせたのであろうし、この部屋に張り巡らせた結界を見てもここ帝国の宮廷魔術師たちよりかは遥かに上の位置にいる魔術師であるという事は窺えてくるもの。 でも、貴方の弟はダメね。 まさに人族を象徴するような存在に反吐が出るわ。 傲慢な態度にどちらが上かも分からない頭の弱さ、そして何よりも私のご主人様を侮辱しているというだけでも万死に値するわね」
「…………さいですか」
どうやら俺が思っている以上にシシルに気に入られているという事が分かった。
それはそれで嬉しいような嬉しくないような、なんか不思議な気分である。
「そういうわけですので私のご主人様をバカにする事は、ひいては私をバカにする事にもなるので私はこれでもかなり怒っているのよ? それこそ明日を待たずにご主人様の弟を殺してしまいそうなくらいには。 でもそれをしないのは、あの弟はご主人様の獲物であり、ご主人様の獲物を横取りするような節操も礼儀も礼節もなっていない奴隷ではないもの」
そういうシシルは静かに怒っている事が伝わってくる。
これが、自分のプライドを傷つけられたから怒るのではなく俺の事を思って怒っているのであれば完璧な奴隷だったのに。
なんて事を思いながら明日の予定をシシルに話すのであった。
◆
「やっと起きたか、このバカ兄貴が。 今日は俺の晴れ舞台なんだからさっさと起きて来てさっさと今日行われるパーティーの準備でもしてろよ、本当に使えない奴だな。 こんな使えない奴が兄貴だなんて反吐が出る。 お前が俺より先に産まれてこなければこんな面倒臭い事もしなくて良かったのに」
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