第23話 ぶん殴るに決まっている

 まさに八方塞がりである。


「……まぁ、うん。 シシルが今のままで良いというのであれば俺からは何も言わない事にする」

「あら、つれないのね。 本当にこの身体を好きにしたいとは思わないのかしら? ちなみに私はそういう経験はないわよ?」


 あー、なるほどなるほど。 なんとなく分かって来たような気がする。 


 このシシルは数百年間そういう色恋をした事がない上に異性とそういう行為もした事がないからこそ、変に拗らせてしまっているのだろう。


 しかも、もし俺の予想通り拗れてしまっているのだとすれば、それは数百年間拗れに捻れているわけであり、変な方向にプライドが向いてしまっているのも、その結果マゾ属性になってしまっているのもなんとなく理解できてしまう。


 要は数百年間処女を守って来てしまった関係でこの年増エルフは発酵してしまったのであろう。


 もちろん発酵食品を好きな人には堪らないのであろうが、これはいわゆるブルーチーズや納豆、下手をすればくさやレベルである可能性もある。


 言うなればその匂いや独特の風味に慣れていないとキツイ食べ物であるという事である。


 そして拗れてしまった数百年もののエルフさんは、俺に取っては少しばかり荷が重すぎたようである。


「いえ、結構です」

「…………割とガチで私の事を避けているように見えるのは気のせいかしら? でも良いわ。 この完成された美しさとプロポーションがあればご主人様のような思春期真っ只中の男子生徒一人を籠絡する事くらい余裕でしょうしね。 むしろそう考えると今こうして必死に私の身体に飛び付きたいのを必死に我慢しているご主人様というのは、こう、なんというか、非常にそそる物があるわね、じゅるり。 おっと、涎が。 それはそうとご主人様、ベッドは一つしかないから同じベッドで寝るしか無いわよ?」

「…………いや、自分の家に帰れよ」


 なんか時間が経つにつれてこの変態エルフはレベルを上げて来ているような気がするのだが気のせいだろうか?

 

 とりあえず俺の貞操を守るためにも明日からベッドをもう一つ用意するとしよう。


 てかマジでこの年増エルフは俺の部屋で寝ていくつもりじゃないだろうな?


「もう、少し冗談をいっただけじゃない。 そんな小さな事で怒るとモテないわよ?」

「いや、モテようとは思っていないしな」

「それでどうするの」

「どうするとは?」

「貴方の家族の事よ。 流石にこのまま何もしないまま明日を過ごして耐え忍ぶという訳ではないのでしょう?」


 そしてこの駄奴隷様には俺の考えはお見通しのようで、どうやら俺の家族よりかは優秀だったようである。


「当然だ。 一生逆らう気が無くなるまで容赦なくぶん殴るに決まっているだろう?」

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