第18話 我慢する方が大変
なんなら明日の事を想像するとにやけてしまいそうになるのを我慢する方が大変まである。
「まったく、なんでこんな能無しが我がクヴィスト家に長男として産まれてくるのか本当に疑問だよ。 弟の出来が良かったからこそ良かったものの、そうでなければと思うとゾッとするよ」
「本当よね。 長男としての役目はまったくできない上に全て弟に押し付けているんですもの。 本当は今すぐにでも殺して無かった事にしたいくらいだわ。 お前は弟のお陰でクヴィスト家は安泰であるという事を感謝して生きなさい」
そして弟のマウントの後に両親が続いて俺に誹謗中傷をしてくる。
その内容に俺はコイツらと本当に血のつながった家族なのかと思わなくもないのだが、どうせ明日で全てが逆転するのだから今さら血が繋がっていようとなかろうと何も問題は無いだろう。
それに、こうして何も知らずに俺にマウントを取って来たり見下したりする度に明日の報復がより一層甘美なものへと昇華するので今の俺には何を言われても嫌な気分にはならない。
それどころか明日自分達が今まで俺に対してしでかした事が如何に愚かであったのか少しでも強く思って欲しいので今のうちに存分にマウントを取り、見下しては誹謗中傷をあびさせて欲しいくらいである。
「おい、何とか言ったらどうだ?」
「まだお前は自分の立場が分からないのか? 明日クヴィスト家を正式に引き継ぐことになる弟のダグラスが、自分のコップに水が入っていないと言ってるのだからボケっとしてないでさっさと水を淹れないか」
「まぁまぁ。 だからこそこいつは恥知らずで使えないのでしょう? そんな奴相手にこっちがピリつくのは癪なので放っておきましょう。 どうやら明日にはこの家から追い出されたいみたいですし、お望み通り明日正式にダグラスがこの家を引き継ぐことが決まったらこの家から追い出してあげれば良いのではないかしら?」
「ふむ、それもそうだな。 俺にそれ相応の態度をとっているのだから本人も追い出される決心はついているのだろう。 折角俺に失礼な態度を取ればこの家からいられなくなると教えてやったというのに」
「本当だな。 弟の優しさすら踏みにじるとは。 なんなら今すぐにも追い出してやりたい所だが、明日こいつとの決闘をする事は決定しているし、招待した貴族達にもその旨説明しているからな。 むしろ明日初めてこの家の役に立てるのだからその舞台を作ってやった俺や弟に感謝する事だな」
そして俺以外の家族は実に卑し気に笑いながら食事を取り始める。
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