第17話 なんと卑怯な

 そしてシシル先生の言葉を聞いて、隷属魔術を解術し終えて立ち去ろうとした俺の足は立ち止まる。


 どうやら待てと言われて待つバカはここにいたようだ。


 それと同時に返答を間違えれば即チェックメイトだという空気を感じ取り、俺は背中に脂汗を滝のように掻く。


 暴力で優劣を決めるのであれば問答無用でぶっ飛ばせるのに、それ以外ではここまで弱いとは。


 今後の課題にしなければ。


「…………しかしながらそう言った所で俺みたいな出来損ないのレッテルを貼られている人間がプライドは高く、帝国の魔女と恐れられるほどの実力を持ち、そしてその美貌と魅惑な身体で男を選べる立場であるシシル先生を性奴隷にしていたと、しかもシシル先生が俺にまた奴隷に堕としてほしいような内容を誰が信じる? 頭がおかしくなったと思うのが普通であろう?」

「簡単な事よ。 魔術アイテムであり嘘を吐くと光って反応する【真実の球】を手に持って噂を広めて行けば問題ないわ。 それこそ私は二度隷属したという内容と、その相手は二度とも貴方であるという事、そして私は今だに貴方によって隷属されることを望んでいるという事が本当である事は分かるでしょう? そしてそれだけの事が分かれば流石に私の話も真実であると信じてくれるでしょう」

「…………」


 魔術アイテム【真実の球】は裁判時などに使われる魔術アイテムである。


 そんな貴重なアイテムをわざわざ使うとはなんと卑怯な。


 そして俺はシシル先生へと隷属の魔術をかけるのであった。





 学園で面倒事が起き、まさかシシル先生を俺の奴隷に堕とすなどとは思わなかったのだが、それでも翌日の復讐にはなんの影響も無いだろう…………多分、きっと、無いだろうと思いたい。


「おいクズ。 俺のコップに水が無くなった事も分からないのか? 明日からは俺がこの家を正式に引き継ぐ事が決まるんだから今お前がやる事は捨てられないように、そして俺の機嫌が損なわないように振舞うべきなんじゃないのか? まぁ、俺がこの家を実際に引き継いだ時に身包み一つで捨てられたいというのであれば話は別だがなっ!!」


 そして俺は今家族と食事を半ば無理矢理取らされているのだが、早速弟であるダグラスが俺に向かってマウントを取って来るので辟易する。


 こうなる事が分かっているから今までこいつらとはできる限り一緒に食事はとって来なかったのだ。


 なんでコイツの憂さ晴らしやストレス解消、マウントを取って悦に浸る行為などの為に俺がわざわざ一緒に食事を取らなければならないのか。


 今まではそれが苦痛で仕方がなかったのだが、今はそんな弟から投げかけられる言葉も『身の程を分かっていないバカが何か戯言を言っている』程度にしか思わないので以前と比べてかなり精神的に楽である。

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