第14話 心が折れるのが早すぎ


 一通り笑った後、呼吸を整えてからシシル先生に話しかけると、先ほどまでの余裕はどこへやらと言った感じで絶望に染まった表情で俺を見つめて来るではないか。


 これからだというのに流石に心が折れるのが早すぎなんだが。


「あ、貴方……今まで私を騙して来たのねっ!? 弱いフリして私を奴隷に堕とす時を虎視眈々と狙っていたとは、このゲスめがっ!! たとえこの身体を弄んだとしても心までは奪えないと思いなさいっ! いつか絶対に隷属状態を解術して貴方の寝首を搔っ切って殺してやるわっ!!」

「いや、普通にこんな反抗的な奴隷を側に置くのは怖すぎでしょう。 嫌に決まってんじゃん。 メリット無いし普通にお断りなんですけど?」

「そうだろうそうだろう。 そうやって肉欲に溺れて…………は?」


 そしてなんか知らないのだけれどシシル先生はこのまま俺の奴隷として生きて行くていで俺を女の敵かの如く睨みつけながら話し始めるので、普通にお断りすると、まるで信じられないといった表情で見つめてくる。


 というか男性生徒や男性教師からも人気が高いシシル先生を奴隷にしている事がバレてしまう可能性を考えると後々面倒事になりかねないので、どう考えても本当にデメリットしかない。


 確かに夜の相手をしてほしくないかと聞かれればして欲しいのだが、別にそれはシシル先生で済ます必要はないのである。


 それこそ娼婦館もあるのだから目先の欲望に飛びつき大きなデメリットを背負うような選択をするほど俺の精神年齢は若くはない。


「いやいやいや、この完成された肉体美が見えないの? それとも貴方の股間は使い物にならないのか、もしくはそっちの気があるとか? それなら仕方がないとは思うのだけれども……」

「普通に女性が好きなので変な誤解をしないように」

「だからそれならば何で私の身体でその欲望を満たそうとしないっ!! これ程完璧な美を目の前にして手を出さないのはおかしいでしょうっ!! 手を出しなさいよっ!! 襲いなさいよっ!!」

「いや、シシル先生は普通嫌がる側でしょうに、何で自分を襲うように仕向けようとしているんだよ。 てかもう鬱陶しいから奴隷も拘束も解術してやるから」


 元もこの高飛車エルフ講師の伸びきった鼻をへし折って、その時の反応を見てみたいだけという好奇心でシシル先生を煽っていただけに過ぎないのだ。


 こちらがデメリットを背負うくらいならば俺の欲を満たすのは二の次である。


 それにどうせ奴隷を解術してシシル先生が『俺にやられた。 アイツは実力を隠している』と言いふらした所で誰も相手にすらしないだろう。

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