第13話 ナメクジに失礼か

「初めから私の言う事を聞いていればこんな事にはならなかったのに、自分の立場も分からないあたりやはり貴方はクズの中のクズなのでしょうね。 人族の駄目な部分を凝縮したかのような愚かさに思わず笑っちゃうわ」


 そしてシシル先生は未だに自分が優位な立場であると勘違いをしているのだが、シシル先生の隷属魔術を跳ね返して自分自身が奴隷に堕ちてしまっている事を知っている俺からすれば、その姿はただただ滑稽過ぎて笑いそうになる。


 しかしながらここはやはり自分でその事に気付いてもらいたいので笑いそうになるのをぐっと堪える。


「さぁ、私のゴミムシ奴隷ちゃん。 早くこの拘束を解きなさい」

 

 そしてシシル先生は俺に拘束している魔術を解術するように命令する。


 俺は努めて冷静に、奴隷化されているかのような従順な動きでシシル先生の所まで歩いていくのだが、従順なのはここまでで当然拘束魔術を解術するはずも無くただゴミを見るような目でシシル先生を見下ろすだけだ。


「貴方っ! その目は何なのよっ!! 奴隷が主である私の命令に背くとどうなるか教えてあげるわっ!!」 


 しかし俺が一向に拘束魔術を解術しない事に疑問に思ったのか、今度は怒気を荒げて命令するではないか。


 恐らく今回の命令は最初とは違い命令を効かないとペナルティーを設定しているのだろう。


 本当は奴隷に堕ちているのは自分とも知らずに。


「何で俺がシシル先生のいう事を聞かないといけないんだ? バカなの?」

「へ? そ、そんな……嘘よっ。 私は確かに隷属魔術を発動したし、さっきの命令は無視すればペナルティーが発動するようにしたのに……ま、まさか隷属の魔術もバインドの魔術と同様に跳ね返されている……? そ、そんな事などあり得ないっ!! そもそも魔術を跳ね返す事など前代未聞なのにっ!!」


 ようやっとシシル先生はプライドが邪魔をしているせいで今の自分の立場をなかなか認めようとしないのだが、それでも状況から少しずつ理解し始めているのか窺えて来る。


「は? 何で私の胸に隷属の紋様が浮き出ているの? ほ、本当に隷属の魔術まで跳ね返されたっていうのっ!? 嘘っ!! 嘘よ嘘よ嘘よっ!!」


 そして今の状況に流石に気付いたシシル先生の慌てふためく姿を見て笑う俺の笑い声だけが教室に響き渡る。


「やっと気付いたか。 遅すぎるんじゃないか? 流石に。 しかしながら帝国の魔女とまで呼ばれているシシル先生がここまで糞雑魚ナメクジだったとはな。 いや、それだとナメクジに失礼か?」



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