第8話 だから使えないのよ貴方は

 今日の授業は一限目で数学を、二限目で実技の授業である。


 数学に関しては前世でいう算数程度であるため今更覚える事もなく、暇な時間になるのでその時間でステータスの再確認などを行う事にする。


 ゲームと違ってこの世界は現実なので失敗はそのまま死へ直結する場合がある為なおさらである。


 せっかくこの、ゲームのキャラクターとして転生したのに少しのミスで死んでしまいましたなんて終わり方は絶対に避けたい。


 そしてこの世界を俺の好きなように生きてから死にたい。


 そう思うからこそ自分にできることと出来ないことをしっかりと把握することは必要だと思っている。


 後、単純に自分のステータスを見たいという欲求もあるのだが、これは今まで虐げられてきた分仕方のない感情なのだろう。


 そしてステータスを眺めながら色々な場面を想定して想像を膨らましているとあっという間に一限目の授業は終わってしまう。


 一限目が終わると昼休みに入るのだが、お弁当などはないので全員食堂へ移動して食事を取ることとなるのだが、だからこそ俺はこの昼休憩がものすごく嫌な時間でもあった。


 全員が食事を取るために食堂へと移動するという事は当然あいつらも食堂へとくるからである。


「お、誰かと思えば明日俺に引導を渡される出来損ないの兄貴じゃないかっ!!」

「……………」

「ちょっとあなたっ!! 私の未来の旦那様があなたのようなグズにわざわざ話しかけてあげているというのに返事をしないということはどういう事かしらっ?」


 そして、わざわざ気配を消して静かに食堂へ入ってビッフェ形式で置かれた料理の数々から今日は何を食べようかと眺めていると聞きたくない二つの声が聞こえてきてげんなりする。


 しかしながら返事をしたところで今までの経験上何も良いことなど一つも無かったのでここは初めて無視をする事にする。


 俺に話しかけてきた二人、弟であるダグラスと婚約者であるリリアナを無視するなんて事は今までの俺であったら恐ろしくて考えさえしなかっただろう。


 それもこれも今俺には力があり、そして何をされてもダメージを喰らう事がないと分かっているからである。


 そう思っているとリリアナが俺へ水の魔術を使って頭から水球を落としたようで、俺は当然のこと、あたりも水浸しになってしまうではないか。 


 一体この女は何を考えているのか、いや、逆に何も考えていないからこんな事ができてしまうのだろう。


「私の言葉が聞こえないのかしら? だから使えないのよ貴方は」

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