第7話 本当に器が小さい人間

 その事からも父親は端から隠すつもりもない事が窺えてくるのだが、今となってはどうでもいい事だ。


 明日はおそらく両親はいかに弟が凄いかと言う自慢話を出席した貴族達に自慢しまくるのだろう。


 なんせ、自慢な弟が正式に公爵家を継ぐお披露目のために開くパーティーなのだから。


 しかしながら両親や弟は知らない。


 そうやって出席した貴族に弟であるダグラスの自慢をすればする程、自らの首を絞め、そして俺が主役へと成り上がってしまう事に。


 まさに、明日は俺のためのパーティーであると言っても過言ではない。


 そう思いながら俺は朝食を抜き学園へ向かう準備をする。


 わざわざ嫌いな相手の顔を見ながら、そして罵倒されながら朝食を食べる必要もないだろうし、そんなものは昨日で終わりで良いだろう。


 俺が行ったところで家族の顔を見るとにやけてしまうのを我慢なんかできそうもないしな。


 それに、今日くらいは家族水いらずで楽しい時間を過ごせばいい。 どうせ今日がそうやって過ごせる最後の日なのだから。


 そして今日も今日とて俺は公爵家の無駄に豪華な馬車に乗って学園へと向かう。


 こういうところで親の見栄とプライドの高さが滲み出ていることが分かる。


 俺個人を馬鹿にするのは良いのだが、俺を通して公爵家を馬鹿にされる事は耐えられないのだろう。


 本当に器が小さい人間である。


 しかしながらそのお陰で俺の事を面と向かって馬鹿にしてくる奴らは弟とその取り巻きか、俺の婚約者とその取り巻きくらいであるので、その点に関しては親が器の小さな人間で良かったと唯一思える点でもある。


 それ以外ではないに等しいのだが。


 あるとすればこの世に産んでくれた事くらいであろうか?


 しかしながら弟と婚約者の周り以外は面と向かって馬鹿にしてこないだけで、学園に通う貴族たちは男爵家や騎士爵など、公爵家よりも明らかに下の階級であろうとも俺のことを見下している事を隠そうともしていない事が普段の言動や態度からもろに伝わってくる。


 それでも弟や婚約者とその周りと比べれば直接何かされるわけではないので全然マシなのだが。


 しかし、そのお陰でクラスメイトの中で俺に話しかけてくる者はおらず、これからの生活について誰にも邪魔をされずに練る事ができた。


 弟であるダグラスは当然なのだが、婚約者であるリリアナとも学年が違うためクラスが違う事に神へ感謝である。


 そんなこんなでこれからの誰にも邪魔されない光り輝く未来を想像しているとあっという間に一限目の授業が始まる鐘の音が鳴り響く。

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