第4話 にやけてしまいそうになる

 そもそもこの顔だって自分自身で『どこかで見たことがある顔だな』と時折思っていたのだが、それがいつも不思議であったのだ。


 鏡を見るとそこに映るのは自分であり自分ではないような、自分はこことは違う別世界・・・で生きているような、そんな感覚になるときがあったし、そう思うのが当たり前であり疑問にすら思わなかった時すらあった。


 そして何故そんな事を思ってしまったのか、そして何故その考えを当たり前と疑問にすら思わなかったのかと、後になって不思議に思っていた。


 しかし、その謎も全て理解できた。


 なぜこうなったのかは理解できないのだが、どうやら俺は前世でプレイしたVRММО、レジェンド・オブ・ユグドラシルで自分の育てて来たキャラクターとしてこの世界で生まれ変わっていたのである。


 前世では趣味と呼べるものはこのVRММОしかなく、俺は給料のその殆どをこのゲームへと課金していた程のめり込んでいた。


 それこそ、このゲームこそが俺にとっては現実よりも大切な世界と思える程には。


 もしかしたらゲームのプレイ中に心筋梗塞か何かで俺は死んだのかも知れないし、他の要因が絡んで異世界転生したのかも知れないのだが、今となってはそんな事など些末な問題であり、どうでも良い。


 異世界転生できた原因が何であれ俺はレジェンド・オブ・ユグドラシルで育てた自分のキャラクターに転生したという事こそが重要なのである。


 あぁ、もし本当にこのステータス通りの能力を俺が持っているのだとすればと思うと顔がにやけてしまいそうになる。


 しかし、まだ駄目だ。

 

 本当にこのステータス通りの能力を持っているのか、また各種魔術やスキルは発動できるのか等、しっかりと確認してからでないと調子に乗って今まで俺の事をバカにして来た奴らを殴りにいって魔術もスキルも何も使えませんでしたでは話にならない。


 やるからには確実にやらなければバカみたいではないか。


 そうなると俺がやるべき事は、このステータスが本当であるかどうかの検証である。


 そして俺は早く検証したいという欲求を抑えながら下校時間を待つのであった。





「ここで良いか」


 今現在の時刻は深夜二時。


 俺は実家を抜け出して学園の修練場へと来ていた。


 今この時間であればだれもいないだろうし、もし見られていたとしても一人か二人程度であろうし、そのくらいであれば能力が使えた場合は捕まえて口封じをすればいいし、能力が使えない場合は見られたとしても何ら問題はないので放っておけばいいだろう。

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