第3話 ステータスオープン
しかしながら、いくら今の俺の状況に腹が立とうが、リリアナや弟に対して怒りを抱こうがそれを覆すだけの力が無いのも事実である。
その度に俺は自分の無力さを感じてしまい、そんな自分が嫌になる。
「せめて召喚魔獣さえ使えれば良いんだが……。 召喚魔獣であれば大体最高レベルにまで上げているし、あんなに課金して集めたんだから一匹くらい使えても良いじゃないか…………ん? 召喚魔獣ってなんだ? 俺は召喚魔獣なんか一匹も契約できていないはずだが……? それに課金ってなんだ?」
そして俺はつい『召喚魔獣ぐらい使えれば』となんの疑問もなくそう口にしたのだが、そもそも俺には召喚魔獣すら召喚出来た試しがない上に、それだけではなく『課金』などと言う意味が分からない言葉まで口にしていた。
意味が分からない。
しかしながら意味が分からないのだが、確かに俺はそれらの事を知っている気がする。 なんだか不思議な気分である。
もしかしたら今まで溜まったストレスで俺の頭はとうとうおかしくなってしまったのかもしれない。
そんな事を思いながらも、喉につっかえた魚の小骨のように気になって仕方がないので『召喚魔獣』や『課金』について思い出そうとした瞬間、俺は強烈な頭痛と共に洪水のように前世の記憶が雪崩れ込んで来るではないか。
俺はその情報量の多さと、それによる頭痛により気を失いそうになるのだが、前世の記憶が脳内に雪崩れ込めば込むほど、俺は同時に歓喜しそうになる。
前世の記憶が正しければ、俺は今まで俺をバカにして来た全てのもの達へ、彼らが言う『力』でもってやり返す事ができるのである。
これで歓喜しなければ何で歓喜するというのか。
俺は思わず嬉しさと開放感のあまり叫び出しそうになるのを何とか堪える。
取り敢えず言える事は、こんなくだらない家や婚約者、貴族やその長男としてのしがらみ、そして帝国を捨てたとしても何も問題はないと思えるほどの力を手に入れた事は前世の記憶が正しければ、確かである。
しかしながら今はまだ『前世の記憶が正しければ』というだけである為検証が必要だろう。
そして俺ははやる気持ちを抑えながらこう呟く。
「ステータスオープン」
すると俺の視界の中に前世でプレイしていたVRММОのキャラクターのステータスが浮かび上がるではないか。
それは、それこそが『俺が前世でプレイしていたVRММОのキャラクターのステータスを引き継いで転生している』という何よりもの証拠であろう。
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