開かれたっぽい大地
「助けていただき、ありがとうございました。感謝してもし切れません」
屋敷の外にて、恥じらいに頬を染めながらビスマルクは頭を下げる。レーニンはビスマルクの背中にくっついて離れない。
「いや、俺もコイツにはムカついたからいいさ。里中歩かされたしな」
ビスマルクとレーニンの石化を解いた後、滝澤は里中を歩き回り、石化されているアルラウネ族を救助したのだった。滝澤はちらりと哀れな男を見やる。
「ぐ……ぐぐ……殺すなら殺せ、ビスマルクよ。我は次の作品を早く創りたくてたまらないのだ」
手袋をつけられたまま木の根でガッチリと拘束されたハザマは恨めしそうな目でビスマルクを見た。
「全く反省していないようですが、私は貴方を殺しません。追放するだけです。レーニン、お願いします」
素早く離れたレーニンが牽引してきた巨大な大砲のような物にハザマは押し込まれた。
「な、何をするのだ!」
「侵入者お仕置き恒例、ニンゲン大砲です。覚悟を決めてくださいな」
滝澤はゴクリと息を呑む。ナスカと出会っていなければ自分もこうなっていたかもしれない。
「3、2、1……発射!」
ビスマルクは勢い良くボタンを押した。どうやら見た目よりハイテクらしい。ポンッ、という軽快な音を立てて、大砲はハザマを打ち出した。
「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ハザマは珍しく悲鳴をあげながら南の方へと空を飛んでいった。
「……さて。侵入者は消えました。滝澤様達ももう行ってしまわれるのですよね?」
「ああ。その前に昨日言ってた知性のある種族について教えてもらっていいか?」
「……わかりました。まずは我々
「い、いや。名前だけで大丈夫。オマケは要らない。要るけど要らない」
それ以上は滝澤の頭がショートしてしまう。やっぱり少し頼りない。
「それで、どうして知性のある種族を私に聞いたのですか?」
「もちろん、その種族の族長に会いに行って協力してもらう為だ」
滝澤は両手を腰に当ててドヤ顔で自分の作戦を披露する。調子に乗るな。
「……?そんな難しい事しなくてもいいのに。滝澤様は直接ニンゲンの国に乗り込むだけで良いんですよ?」
先程まで玄関先で荷支度をしていたナスカが横から口を挟んできた。出発の準備が出来たらしい。
「族長であるビスマルク様に頼めばそれぞれの族長に連絡できるのよ」
「……え?」
これには滝澤赤っ恥。完全にモンスター側の技術をナメていた滝澤が悪い。
「ええ、出来ますとも。魔王族はもう絶滅しましたけど」
「……ってことは、俺の昨日の思考時間無駄だったワケですか!?」
「何をお考えだったのかは分かりませんが、そうなりますね」
滝澤はがっくりと肩を落とす。
ー︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ー ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ー
ビスマルクは里の外まで旅立つ二人の見送りに来てくれていた。その道中、昨夜助けたアルラウネ達に礼を告げられ、滝澤は御満悦である。
「ありがとうビスマルク。俺、頑張って魔王になるよ。期待して花束の用意よろしく」
「はい、よろしくお願い致します。あと、ナスカの事も」
ビスマルクはペコリと頭を下げた。
「何で私!?むしろ滝澤の方でしょ!」
「わかった、任せとけ。俺が一人前のアルラウネにしてやるから」
「いいわよ別に!必要ないわ!」
二人のやり取りをビスマルクは笑顔で見守る。
「(……私はモンスターとニンゲンが手を取ろうとする姿を何処かで望んでいたのかもしれませんね……)」
木刀が滝澤の手に渡るまでの経緯や滝澤の手が持つ力についてはまだ何も分かっていない。だが、滝澤の魔王になる旅が本格的に始まってしまったのだった。
「魔王までの道のり……言うならルート魔王ってとこか」
「置いてくわよ!」
先を行くナスカが呼び掛ける。
「酷い!今めっちゃエンディング的な雰囲気出してたのに!」
ー︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ー ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ー
「ぬぅ……ここは何処だ?かなり飛ばされたようだが…」
ハザマは痛む後頭部を押さえながら立ち上がった。おかしい。あれほど飛ばされておきながら怪我一つ無い。不審に思ったハザマは辺りをキョロキョロと見回す。
「……!」
振り返ったハザマは大きな目と目が合った。
「は……はは……竜種か。こいつは困ったな」
ハザマは手袋に手を掛ける。しかし、外そうとしても外れない。木の根が巻き付いていたのだ。ハザマの表情が凍り付く。
「ま、待て!お前たちの怒りは解……ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」
ハザマは短時間のうちに二度も悲鳴をあげることとなった。再び孤独に戻った龍は大きく溜め息を吐く。
「愚かな者よ……この森に入ったからにはワイヴァーンの裁きを受けるというのに。……誰だ?」
繁みの奥から誰かがやってくる。
「おじいちゃん、ご飯できたよ」
「じいさん、鎧の整備手伝ってくれ」
同時に2つの人影が龍の目の前に現れた。だが、龍は今度は違った感情の溜め息を吐いた。
「仕方ない。行くとするか……」
Now Lording……
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