rewind
ドアを開けて中に勢いよく入る。
目の前のシロタはこちらに向けて背をむけていた。
僕は手にした銃の安全装置をはずし、シロタにむける。
「来ると思っていたよ」
彼女は背をむけたまま声を上げる。
「こちらを向いてください」
僕は彼女にこちらを向くように指示する。
シロタはゆっくりと振り返る。
彼女は僕の姿を見ながら微笑していた。
「やぁ、また会えて嬉しいよ」
「僕もですよ、Dr.シロタ」
「君はなんて呼べばいいかな? ミナト君、それとも幸四郎君のコピー?とか」
彼女はいたずらを思いついた子供のような笑みを浮かべながら言う。
「そこはミナトでお願いします」
「ふふふ。 答えは出たかい?」
「自分を定義するという問いですよね? 出ませんでした」
「残念だ。あこがれた先輩に会えたようで嬉しかったんだけどね。 多分、学生の時ならときめく瞬間だろうけど、今はなんとも思わないのが不思議だ」
シロタはかなりおどけた感じで言う。
「ふざけないでください。完全に貴方はもうお終いです」
「お終い? 君は何か勘違いしているんじゃないのかい?」
シロタは両手を広げ、呆れたように言う。
「今回、私が起こしたことだが元を辿れば、それなりに罪を追うべき人間が居るはずなんだ。 皆、それがわからないらしい」
シロタはそういいながら窓の外を見る。
「いいかい。 今回、この船に積まれているクローンは元々どこへ運ばれる予定だったと思う?」
シロタは僕を見ることなく続ける。
「クローンは世界経済を動かすような人間たち、権力をもてあます人間の元に運ばれる。
そうするとこのクローン達はどうなる? 彼らの精神意識をいれる為の器、魂の別の依り代として使われるか、内臓を摘出し、移植のために使われるかのどちらかになる。行き着く先彼らには自由はない。残念ながらタンパク質の塊というだけの物でしかならない。だが私が、別の使い道を探し、それを示そうとしているんだ」
「だからと言って貴方がしたことは良いこととは思えない」
僕は銃を構えながら彼女に言った。
「確かにこの国の内情をつかんでいる御三家がいて、それに反旗を翻し、倫理を犯すような技術でも貴方がしたことは良いこととは僕は思えない」
「それは正義感かい?」
「いえ、ただの個人の主張です」
僕がシロタと向き合い、数秒間、見つめる。
「ここで終わりにしましょう」
僕は震える手でそう言ってシロタにむけた銃口の引き金を絞った。
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