operation start_2

その間も甲板でアヤメが発するエメラルド色の光と何かが爆発する閃光と轟音が混じり合う。恐怖もあるが今はシロタのところへ向かうことに意識をむけているからかなのか、気分が高揚したような不思議な感覚に陥っている。

「全員、急げ」

黒百合の隊長が声を上げた瞬間、僕は視界の端で”バッド”が勢いよくこちらにめがけて滑空を始めたのを気が付いた。

隊長がライフルを構えた瞬間、”バッド”が手から何かを投擲した。

「全員、退避!」

隊長の一言と共に数メートル先の階段が、勢いよく爆発した。

爆風で身体が持って行かれそうになるが、烏間が依乃里さんを守ったようにしたおかげで

なんとか、自分も被害を免れた。

階段の先を見ると爆発で階段が無くなり、先へと進む方法が無くなっていた。

「これじゃあ、先へ行けない……」

依乃里さんがそう言い、苦虫をつぶしたような顔をする。

「別のルートは……」

依乃里さんがそう言いかけて僕は彼女に声をかけた。

「僕が先に行きます」

「でもどうやって?」

「烏間、彼の力で、僕を投げてください」

「本当に言っているの? 正気じゃない」

「正気かどうかは別としてやるかやらないかだけです」

僕は依乃里さんに言った。

横で、部隊の隊長が”バッド”にむけてライフルを打ち続ける。

「迷っては居られない。 その間に、シロタが逃げる可能性もある。 だからお願いします」

僕は強く言った。

「……いいわ。 頼んだわよ」

依乃里さんはそう言うと烏間を見る。

「烏間」

「なんでしょう、お嬢さま」

「彼を階段の先まで投げられる?」

「俺が行くのは無理ですけど、アイツの身体なら投げれます」

「ならやって」

依乃里さんがそう言うと烏間が、こちらをジロリと見る。

「ガキ」

「なんですか?」

「覚悟はいいか?」

「覚悟も何もやるだけです」

「なら文句はないな」

烏間がそう言うと僕の首元をいきなりつかむ。「えっ?」

何が起きたのかわからず、状況をつかもうとした時には足が離れていた。

「とりあえず行ってこい!」

烏間が叫んだ瞬間、僕は空中に浮いていた。

「あああああああああ」

身体が離れた階段にむけて進み、声を上げていた。

階段が目の前に迫り、そのまま腕を伸ばした。上半身が階段にぶつかり、僕は必死で腕を伸ばし、階段をつかむ。

下半身が空中に浮いたままでこのままでは落ちる。

僕は必死で階段の手すりをつかみ、登る。

やばい、落ちると思いながらもなんとか、這い上がり、階段に足をつける。

足が着いたことで変な安堵感を感じる。

僕は後ろを振り返る。

かなり離れた階下に依乃里さん、烏間、部隊の隊長が立っていた。

自分と三人が立っている間には何もなくここを飛んだのかと思うと背筋が凍りそうなほど。「先にいきなさい! 援護はこちらでするわ!」

依乃里さんがそう叫ぶ。

僕は頷き、階段を駆け上る。

操舵室まで後少し。

”バッド”が空を旋回し、こちらを狙おうとするが依乃里さん達の援護で空からは滑空してこない。

僕はそのまま、走り続ける。

操舵室が見えてくると、その周りには警備のような傭兵は居ないのか、誰もおらず戦闘の音だけが耳に入り、更に不気味さを増していた。

足を動かし、操舵室へと近づく。

僕は依乃里さんから貰った銃を手に取る。

正直、使いたくはない。

けれど手段なんて考えている暇はない。

僕は銃のグリップを強くにぎる。

階段を駆け上がり、操舵室の前の通路にたどり着く。

僕は辺りを警戒しながら足を運ぶ。

やはり操舵室の周りには見張りはおらず、進める状態になっていた。

辺りを確認し、そのまま操舵室のドアへと身を隠しながら近づく。

操舵室の中には一人、女性が立っていた。

僕はそれを確認し、もう一度、姿を隠す。

シロタの存在を確認し、僕は緊張で乱れた呼吸を整えるように一呼吸し、目を一度、目を閉じもう一度開ける。

そして勢いよく立ち上がり、操舵室のドアノブに手をかけた。

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