prepare

シロタを捕まえるという作戦は四時間後という説明を受けた僕らは、一度、家に戻り、待機することとなった。

なんだか不思議な感覚で拉致された直後はなんとも思わなかったが、いざ、自分で決めた何かこととなると戸惑ってしまいそうな自分

がいた。

けれどここでもう一度、シロタにあい、再度確認したいことがあった。

それを確かめる為に危険を犯してでも行かなければという気持ちがあった。

「恐いのか?」

アヤメが、真顔で僕の方を見ながら言った。

僕は彼女の顔をみて言った。

「そうかもしれない」

僕は必死で、笑顔を浮かべようとする。

それをわかっていたのかアヤメが、僕の背後にまわり、腕をからめ、自身の身体を密着させる。

「それでいいんだ。命のやりとりだ。歴戦の戦士も恐怖することがある。別に恥ずかしいことじゃないし、気にするな」

アヤメはそういって絡めた腕の力を少しだけいれる。首筋に彼女の息がかかり暖かさを感じる。

「ありがとう。 アヤメ」

「私は側に居る、 安心しろ」

アヤメがそう言って笑うのがわかった。


 作戦開始の二時間前になり、黒百合の向かえの車が、家の前で止まる。

僕らはそれに乗り込み、街の南にある港へとむかう。

車内では誰も口をきかず、運転する人物は黒百合の私設の傭兵だろうか完全に一般の人間

とはかけ離れた格好をしていた。

それを見て、僕は本当にこれから行くのだなと思った。

その場に到着するとそこは港から少し離れたところにある建設中のビルだった。

ビルは既に外観は作られ、内装の工事だけが取り残されていた。

黒百合の案内の人につれられ、ビルの中へ入り、階段を登る。

一定の階数につき、ドアを開けるとそこに黒百合家の私設の傭兵部隊が十数人たっていた。完全に全員、黒色の装備をしていて手や、肩からかけられたライフルが目を引いていた。

ぴりついた空気が流れていて完全に僕らは場違いだと思った。

「来たわね」

後ろから凜とした意思の強い声が聞こえ振り向くとそこに学生服の上から防弾チョッキを着た依乃里さんが立っていた。

「とりあえずミナト君は最低限の準備をしてもらうけれどいいかしら?」

準備?

「一応、話すと言っても貴方の身に何が起こるかわからないから一応、安全を配慮するわ。その為の準備よ」

依乃里さんはいつにも増して切れ味の鋭いような声で言った。

「わかりました」

僕がそう返事し、部下らしき人が近づきこちらへと指示される。

僕はそれに着いていき、防弾チョッキを着用をしてくれと言われ、指示通りに身体に取り付けた。

防弾チョッキは鉛が入っているのか重く、身体にズッシリとした重さをもの凄く感じていた。

「準備し終わったかしら?」

依乃里さんがそう言いこちらに近づく。

「終わりましたけど大変ですね」

「まぁね。あとこれを渡しておくわ」

依乃里さんがそう言い腰に手を回して何かを取り出した。

「これを」

そう言って差し出されたのは小型の銃だった。「これなら素人でも取り扱える。 護身用としてはいいはずよ」

「そんな…………」

僕は差し出された銃を受け取るべきか悩んでしまった。

「悩む必要はないわ。 別に使わなければいいんだし、もしミナト君が自分で危険を判断して使う時だと思ったら使えばいい」

依乃里さんはそう言い、僕の手に銃をつかませる。

受け取った銃を見てみる。

小型だが思っているよりも重たく感じた。

「とりあえず無事に帰れることだけ考えていればいいわ」

依乃里さんはそう言い、部隊の方へと戻った。

僕は彼女の後ろ姿を負い、歩き出した。

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