wake up
僕は気が付くと空を見上げていた。
雲はどんよりとしていて雨が限りなく降っていた。
雨粒が自身の肌に当たる感覚があり、僕はそれで目が覚めたようだった。
視線を写してみた。
そこは林なのか森なのかわからないが辺りは青々とした緑に覆われていた。
もう一度、僕は視線を空にむける。
そこで初めて自分が地面に横たわっていることがわかった。
僕は身体を起こすことに決め、起き上がる。
起き上がり、辺りを見回してみる。
自分が寝ていたのはどうやら道路の真ん中という事実に驚いた。
青々とした緑はどうやらガードレールの向こうに見える光景だった。
身体を起こしてみると反射で身体が震えた。
全身を見てみると、びしょびしょに濡れていた。
長い時間、雨に打たれていたのだろうか?
服も濡れ、気持ち悪いくらいにずぶ濡れだった。
今は夏に近い時期だからいいものの、もし冬に近ければ間違いなく凍死していたと思った。辺りを見回しても、緑しかなくどうやってここまで来たのか不思議だった。
確かDr.シロタと話していたはずだった。
そして後ろから変な液体を注射された。
それから記憶が途絶えている。
多分、睡眠薬か、何かだったのだろう。
僕は首元をさすり、前を見た。
山奥なのか道路はくねくねと曲がり、この先に何があるかわからない場所だった。
僕はポケットを探ったが、スマートフォン、拡張現実の端末全て、抜き取られていた。
さてどうしたものかと思っていると後ろから車が近づいてくる音がした。
振り返ると黒塗りのセダンタイプの車だった。僕は道路の脇にそれようとしたが、向こうからやってくる車の窓から人が乗り出した。
「ミナト!」
それはアヤメだった。
それをみた僕はなんだか不思議な安心感というか安堵した。
車が近くに停車するとドアをあけ、勢いよくアヤメが飛び出してきた。
「ミナト!」
彼女はそう言い、僕に近づき真っ直ぐにこっちをみる。
「大丈夫だったか?」
「まぁ、なんとかね」
「本当かしらね」
もう一人の声がし、車から出てきたのは依乃里さんだった。
「依乃里さん」
「探したわ」
彼女はそう言うと扇子を口元に当てる。
「ありがとうございます」
「礼なら、アヤメさんに言って。 貴方が拉致された後、単身、黒百合のビルに来て大変だったんだから」
依乃里さんは呆れたように言うと、首を横に振った。
「とりあえず車に乗って貰いたいんだけど…………」
依乃里さんは僕の全身を下から上へと見て言った。
「とりあえず、着替えを用意しましょうか」
そう言われ、僕は自分の全身を再度、見て苦笑いをした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます