idle talk
僕とアヤメは拘束され、手を縛られ、拉致のような形で頭に袋を被せられそのままヘリに乗せられた。そしてどれ位たったのか分からないがヘリに揺られ、振動と音がやむと袋をとられる。
袋の中は暗かったため視界がなれず、どこかもわからなかったがすぐに辺りが白んでいる
ことからそんなに時間が経っていないことだけはわかった。
隣を見るとアヤメも同じようになっていて、僕は声をかけた。
「大丈夫?」
「私は大丈夫。 ミナトこそ」
「僕は大丈夫。 もうこういう急激な展開は慣れたよ」
「そうか」
アヤメは少しだけ微笑む。
それを見ていたのか先ほどの金髪の女子校生、大宮・セイント・邦子は口を開いた。
「意外と君たち余裕あるじゃん。 まあ、今日は話をする為につれてきたんだから」
そう面白おかしいと言わんばかりに言うと、
周りの特殊部隊のような人たちに何か指示を出す。
すると特殊部隊のような人たちはヘリから降りろとだけ命令し、僕らを銃で小突くようにしながら進ませる。
ヘリから降りるとそこはビルの屋上、多分、ヘリポートだろうか辺りは快晴で遠くの方まで見渡せ、そして周りのビルが小さく見えるということはここが高い建物の上だということを示していた。
僕とアヤメは横に一列に並ばさせられると手を縛っていた拘束を解かれる。
「じゃあ、私についてきて」
大宮と名乗る彼女はそういうとスタスタと前を歩き出した。
なんだかこういう光景前にも見たことがある。僕は考えないようにして女子校生の後をついていくことにした。
特殊部隊の人たちは一列に並び、後ろで女子校生に向かい敬礼をしていた。
ついてこないんだと思うとすこし安心したが
それはつかの間だった。
ヘリポートを通り過ぎ、建物の入り口であろうドアに入るとそれから階段を降りようと
して眼下に飛び込んできたのは大きな室内庭園と大きな屋敷だった。
おもわず見とれてしまい、その場で立ち止まってしまう。
「驚いた? これは大宮家の本家が入ったビルなんだよ。 そこに見えるのが大宮家の家ね」
彼女は友達にでも案内するかのごとく言った。階段を降りていくと大きな庭園のようなところにつく。
そこには左右大きな池がありよく大きなお寺なんかにあるような鯉でも泳いでいそうな感じだった。
池の真ん中に橋がかかっており、そこを抜けると入り口の門になっていた。
門には「大宮組」と大きく書かれた木の看板が立てかけてあった。
金髪の女子校生が門を開ける。
するとそこには左右通路を壁でも作るかのごとく恐い顔をした人たちがずらりと並んでいた。
その恐い顔の人たちが金髪の女子校生を見るやいなや一斉に叫んだ。
「「「お帰りなさいませ、お嬢!」」」
ビルの内部全てに響き渡るくらいの大音量で来る場所違っているんじゃないかと思うほど迫力があった。
「うん。 今、帰ったよ。 ちなみにお父さんいる?」
大宮・セイント・邦子さんは親しい叔父さんにでも話かけるように近くの恐い顔のボスらしき人に問いかけた。
「へい、家の中でお待ちでございます」
その人は短く答えると一礼をする。
「そうじゃあ、話ははやいね」
彼女はそういうとスタスタと中に入っていく。僕とアヤメは追いかけるが、まるで黒百合家の烏間のごとく恐い顔の人たちは僕らをにらみつける、しかも露骨に顔を見ながらじっと此方を見る。
僕とアヤメは気にしないようにしながら後をついていく。
玄関に入るとそこにはまるでプロレスラーかと思うほど大柄で白髪をオールバックにしたストライプのスーツを着た初老の男性が立っていた。
「ただいま、帰りました。 お父様」
大宮・セイント・邦子さんはぺこりとお父様
と呼んだ人に頭を下げた。
「客人をつれて参りました」
彼女がそう言うと、目の前の大柄の男性はジッと僕とアヤメを注視する。
なかなかの迫力で、正直、足が震えるほど。数秒、目の前の男性は黙ると、急に花が咲いたかのように顔を歪め、満面の笑みを浮かべた。
「おお、よく来た! 待っていたぞ、曳舟!」
目の前の男性は獰猛な肉食獣のような低く響くような声をしていて、腹の方に反響しそうなほど。
突然の変わりように僕は拍子抜け、唖然としてしまった。
「ワシの名前は大宮家十五代当主、大宮政近だ」
大宮政近は腕組みをし、フンと鼻をならしながら言った。
「早速、客人には来て貰って悪いが、ワシはまだ仕事が残っておる。 邦子、お前が後を頼んだぞ」
ガハハハハと笑いながらそれだけ言い残すと僕らを通り過ぎて家から出てしまった。
それを見ていた大宮・セイント。邦子さんはこちらをみて言った。
「そういうことだから、じゃあ、上がって」
そう言われ、言われるがまま家の中へと僕とアヤメは大宮さんについていく。
大きな屋敷と言ったほうがいいだろう。
まるでこの国の昔の様式作りの家でどこか日常とかけ離れた感じがあった。
家の中に中庭が有り、そこにはまた小さな池があったりと規格がよくわからないくらい大きい家だった。
廊下を通り、案内されたのは部屋の一角、襖を開けるとそこは畳が敷かれ、本棚がいくつもあり、パソコンが置かれた机と部屋の真ん中に大きなちゃぶ台が置かれた部屋だった。ちゃぶ台は初めてみたが、その周りにクッション代わりに置かれた座布団というのだろうかそれが置かれていた。
「とりあえずここに二人座っててね」
彼女は座る場所を指定し、その指示通りに僕とアヤメは座る。
拉致されて連れてこられたにしてはなんだがよくわからない状況だった。
僕とアヤメはお互いに顔を見合わせる。
「どういうことなんだ、ミナト?」
「逆に僕が知りたいくらいだよ。 急にDr.シロタの改造人間らしき奴に襲われかけて、そこにあの金髪の彼女が現れたんだ。 ショットガンで改造人間を追い払ってくれたんだけど、その後、すぐにショットガンをむけられてこの状況だよ」
「そうなのか」
アヤメは大宮さんの意図を探ろうと何か思案していたが僕はもう事の成り行きに任せようと思った。
「お待たせー」
そういと大宮さんはお茶とせんべいを持ち、なんだが定番の形で登場した。
僕とアヤメ、大宮さんの人数分のお茶が配られ、ちゃぶ台の真ん中に煎餅が乗った皿を置く。大宮さんは僕たち二人の目の前に座る。
「じゃあ、改めてよろしくね。 大宮家、三女の大宮・セイント・邦子です。 クニちゃんって呼んでね!」
どこかおかしいノリで彼女はピースをしながらにこやかに言った。
しかも二回目。
なんだか分からないけどこうも黒百合依乃里さんといい、独特な人ばかりなんだろうか?
「は、はぁ」
僕はなんだが曖昧な返事しかできず、ただペコリと頭を下げた。
「何、その曖昧な返事ー! 曳舟ミナト君は恥ずかしがり屋なのかな? じゃあ、仲良くするためにミナトンって呼ばせて貰うね!」
大宮さんはなんともいえない明るいテンションで言う。
正直、この人は距離感がわからない。
たしかに初対面で距離感がお互いに分からないにしても目の前の大宮さんは壁が既にないと言った感じだ。
僕はどう関わろうか考えていると隣のアヤメが一言呟いた。
「なんだこの女?」
僕はおもわずアヤメの方を勢いよくみた。
どうやらアヤメは僕よりもさらに距離感がわからず怪訝な顔をし、大宮さんをすごい顔で凝視していた。
初対面だけどそりゃ、そうなる。僕が一人ごちていると大宮さんが言った。
「なんだじゃないさ。 私は大宮・セイント・邦子だよ。 名乗ったじゃん!」
大宮さんは和やかに言っているがなんだか、圧を感じるような言い方だった。
「もうー、曳舟の騎士はなかなか無愛想なのかな?」
大宮さんは人指し指を頬に当てながら言った「無愛想というかいきなりここに連れてこられて何も説明もないのが気にくわないだけ」アヤメはぶっきらぼうに言い、表情を変えずただ大宮さんを真っ直ぐ見ていた。
なんだか怒っているのか雰囲気が少しピリついているように感じた。
「嫌だなー、これから説明しようと思ってたんだよ。 そんな恐い顔することないよ」
大宮さんはアヤメの雰囲気に臆することなく明るい感じで言った。
僕はなんとなく埒があかないと思い、大宮さんに問いかけた。
「大宮さん、質問してもいいですか?」
「大宮さんじゃなくて、邦子でいいよ! ミナトン」やりにくいなこの人。
「じゃあ、邦子さん。 なんで僕はここに埒されたんです?」
ストレートに質問することにした。
黒百合家の人間と関わり少しは状況の把握する能力はついた気がするけれど未だに拉致されたという事実しか考えられず、答え知りたかった。
「拉致とは人聞き悪いな。 ミナトンを助けたんじゃない。 Dr.シロタの魔の手から」
「確かに感謝しています。 けれど説明や話があるならあの場でもよかったんじゃないんですか?」
「そうなんだけどね。そうもいかんないんだな」
邦子さんはどこか困った表情をすると頬をかいた。
「ちなみにミナトンはどこまで知っているのかな?」
金髪の女子校生は首をかしげながら僕の顔を見る。
「そうですね。 黒百合家の黒百合依乃里さんからある程度の概要は聞きました」
「依乃里さんね」
ん……?
邦子さんはどこかバカにするような鼻で笑った感じがしたぞ。思い過ごしか?
「彼女、元気だった?」
「え? ああ、元気でしたよ」
「そう、まぁ、あの女が元気じゃないときなんてないもの」
邦子さんは口元を歪め、なんだかさっきの明るい雰囲気がどこへ消えたのか、好戦的な感じのする雰囲気に変わった。
あれ、依乃里さんは手を組んでいると聞いたが、なにかあるのだろうか?
「黒百合依乃里は私の同級生なのよ。 まぁ、クラスは違うけどね。 あまり高飛車なもんだからあまり好きじゃないんだけど。 私のことは何か聞いている?」
邦子さんは、またどこか朗らかな笑みに戻る。「いえ、なにも聞いてないです。 僕はただ概要だけを聞かされてましたから」
素直に自分の状況を述べる。
「そう。 まぁ、それなら別にいいんだけど。まぁ、ミナトンに説明しても両家のことだから関係ないしね」
邦子さんは明るい口調で言った。
僕は何となくまだ依乃里さんのほうがつかみやすいと思った。
「一応、説明しておく上で聞くけど、彼女両家の関係をなんて言ってた?」
「えっと、確か協力関係にあるとかって」
「そうね。 一応、聞いたかもしれないけど御三家、黒百合、大宮、天来、三家はそれぞれバランスを保ってきたけど、ミナトン、お父さんのことは残念ね。 一応、ミナトンのお父さんがいたからバランスを保ててたわけ」
「依乃里さんが言ってました」
邦子さんは頷く。
「黒百合と大宮は確かに協力関係にあるけれど、ライバル同士でもあるのよね」
「競い合う相手ということですか?」
「単純に言えばそういうことだけど、もっと複雑。 お互いに利用したり出し抜いたりと。だから今は確かに黒百合と大宮は手を組んでいいるかもしれないけど、いつどこかで天来と手を組むかは分からない。 正直にいうと協力関係だけど関係性はよくないのかもしれない」
あまり仲良くはないということか。
「けれど今回は話が別で、天来はその御三家の中での協力関係を破って裏で何かこそこそしている」
「Dr.シロタのことですか?」
「そうね。 依乃里から聞いているかも知れないけどDr.シロタは天来の息のかかった人間。 そしてややこし事に天来の方につく前はこちら大宮の研究者でもあったの」
「どういうことです?」
「つまり天来側に引き抜かれたのよ。 そのおかげでこちら大宮の技術が流失した」
「技術?」
「そう。 大宮は建築、土木の建設関係、そして医療の分野に強みがあったの。 その分野の一部門にナノマシン開発があった。そこにDr.シロタはいたの。 そして今だから分かったけれどミナトンのお父さんもそこにいたの」
また父の存在が出てきた。
疑問が出てきたが、そこは触れずに話を聞くことにした。
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