日常_2

目が覚めすでに起床する時間を十分ほど過ぎてしまっていた。

多分、昨日の疲れがかなり響いたのだろう。

僕は自分の部屋を出て、リビングへとむかう。すでにアヤメが起きていて、何かしていた。

「起きたか」

アヤメは僕に気が付き顔を上げる。

「何、しているの?」

「何って朝ご飯の支度だ」

そういってテーブルの上で彼女が用意していたのはいくつかの缶詰や、金属でできた小分けできるプレートの上にのせられた銀色の袋

や表面に何か英単語が書かれた袋など、どこか宇宙にでもいくのかなと思うような代物が並べられていた。

「これは……?」

「レーションだ」

「レーション?」

ローションとかいう単語は聞いたことあるけど。

僕は袋の一つを取り、触ってみる。

「食べ物だよね……」

「そうだ。 政府軍が大国から支援で貰っていたものだ。 紛争が集結した時に、頂いたものだ」

アヤメはどこか嬉しそうに言った。

「そ、そうなんだ」

「袋をあければそのまま食べられるから便利だぞ」

彼女はそう言って袋の一つを手に取り封を開けた。

取り出されたのはパンのような代物。

「美味しいぞ」

そういって彼女は僕に差し出す。

「ありがとう」

僕は礼を言ってそれを受け取り、、眺めてみる。

手にすると売られているパンより少しだけ固いが食べられないわけではない。

僕はそれにかぶりついてみた。

どうやらサンドウィッチらしく味は悪くなかった。

ふとアヤメは僕のことをジッと観察するように見ていた。

その見る目はどこか何かを期待しているような目で次に何を言えばいいかは決まっていた。「美味しいよ」

「そうか」

彼女はどこか満足そうな顔をした。

「アヤメは食事はいつもこれを?」

「いや、これは最高級品だ。 もっと質の悪いレーションを食べていた」

僕は思わず手にしたパンを見る。

「それに料理をしたことがなくて。 朝ご飯というのを食べると幸四郎から聞いていたから何か作らなければと思ったんだが」

そう言って彼女は後ろをチラリと見た。

キッチンには使用されたフライパンや色々な器具が山積みになり調理器具の屍の山ができていた。

「すまない」

彼女はどこかしょんぼりとした顔をしながら謝った。

「だ、大丈夫だよ。 気にしないでくれ。 それに料理は……僕が作るから気にしないで」

僕は彼女に苦笑いを浮かべながらそう言い、誤魔化すようにレーションのパンにかぶりついた。


 とりあえず僕は登校することに決めたが、アヤメがついていくと言い張り玄関前で一悶着してしまい、到着する頃には遅刻ギリギリの時間に家をでることになってしまった。

彼女には父が昔、使っていた携帯端末を預け。、それを今の僕の拡張現実と繋がるように設定しなんとか納得してもらえた。

拡張現実を起動すれば携帯端末の中にインストールしてあるアプリが起動するようになっていた。

そうすれば自分に何かあった時に拡張現実を起動すれば彼女に知らせることができるという算段だった。

とにかくDr.シロタの作る改造人間が襲ってこなければいいと思っている次第ではあるが。

僕はそう思いながら高校のみちのりを小走りで行く。

すると自分の背後で何か嫌な感じがし、振り向いて見る。

すると今までいたはずの通行人がいなくなっていた。

僕はあたりを見回す。

いつも通る道のはずなのにどこか別の道に感じてしまうほど雰囲気が変わっていた。

何が起きたのか状況が把握できず僕はそのまま高校の方へと走りだそうと元の方向へ向いたときだった。

道の真ん中に黒づくめの人物がふさぐようにして立っていた。

まさか”ヴァイパー”か?

そう思い、目をこらしてみる。

道の真ん中に立って入る人物と自分の距離はかなり離れている。

けれどこれだけ嫌な雰囲気がするということは警戒しないといけない。

よく見てみると蛇の被りものなどはしておらず代わりにシルクハットのような帽子を被り黒いコートを纏っていた。

それだけでも完全に怪しい。

僕は立ち止まり、どうするか考えた。

すぐに自分の拡張現実を起動し、アヤメに知らせることにした。

そしてそのまま後ろに走りだそうとした時だった。

目の前の人物がシルクハットを掴み投げ捨てると両手を勢いよく開いた。

そこに現れたのはウサギのような耳をつけ、

豚の鼻に似た動物の仮面をつけ、両手を広げるとその下はまるでマントのような感じに似ているが黒い翼のように見えた。

被り物が何か分からなくてもそれがきっとコウモリであることには間違いないと思った。直感でDr.シロタの改造人間だとわかった。すぐに僕は逃げることに決めた。

この距離なら大丈夫だろうと思った。

しかし、その考えは甘かった。

「キュケェェェェ」

意味不明な声を発するとコウモリ男は両手を翼のようにはためかせながら走り出した。

地面すれすれをまるで滑空するかのように此方に向かいすごい速さで飛んできた。

「マジかよ!」

僕は思わず叫びながら足を動かした。

とにかく逃げなければ。

後ろを軽く振り返る。

すでにコウモリ男との差は埋められコウモリ男が手を伸ばせば届きそうになるほどの距離。僕は思わず目の前に飛び込む感じで地面にしゃがみ込んだ。

「キィケェェェェェ」

意味不明な奇声と共にもの凄い風が頭上を通り過ぎていくのがわかった。

すぐに顔を上げるとコウモリ男は空高く舞い上がり、空中で体勢を変えると地面にいる僕

を見下ろすような形になる。

「キィエェェェェェェエ」

すぐさま此方を確認して滑空してきた。

すぐに逃げないとヤバいと思い、起き上がり、走り出した。

コウモリ男は尋常じゃないスピードで飛んでくる。

僕はとにかくつかまらないように足を動かした。

けれど背後で聞こえる奇声が近づいてくるのが分かる。

おもわず振り向いた。

もはや後にメートルもないところだった。

まずい捕まると思った瞬間だった。

ドンというもの凄い破裂音が響くと共に滑空していたはずのコウモリ男が横に吹き飛んだ何が起きたのか分からず音がした方向を見る。そこには制服を着た金髪の女子高生が手元に黒いショットガンを持ちながら立っていた。

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