また父の遠い日の夢を見ていた。

父は書斎で本を読みながら僕の方に言った。

「人間には思い込みの力がある。それは自己成就予言とも呼ばれる。人間は無意識に予言に沿った行動を取り、結果として予言を実現できる。 自分は運がいいと思っていると現実にもそういう影響があるという話だ」

よく父はこうやって難しい話をしていた。

なんでそんな話をするのか、子供ながらに何なんだと思いながら聞いていた。

知ってか知らずか父は続けていた。

「人間、ポジティブ、ネガティブな感情は自分自身が作りだしている。 物の見方は一つではないことは忘れるな。解釈の仕方を変えれば現実はいい方向にも悪い方向にも転ずる」

父は僕の頭を撫でながらそう言い、また本の世界へと戻っていく。

きっとそれは僕に言い聞かせているようで自分に言い聞かせていたんじゃないないだろうか。

僕は夢の中でそんなことを考えた。

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