conversation

車を降りるとそこは見知らぬホテルの正面入り口だった。

ホテルの入り口は映画のセットでも使えそうなほど豪華な装飾がしてあり、何かイベント事などが無い限り近づくことさえない場所であり、入る者を選ぶような雰囲気がしていた

「さぁ、いきましょうか」

依乃里さんはまるでファーストフード店にでも気軽に入るかのようにスタスタと入っていく。ホテルの中へ入っていくとスーツを着た白髪のホテルマンが依乃里さんの前に現れた。「お待ちしておりました」

白髪のホテルマンが依乃里さんに向かい、一礼し顔を上げる。

「ではこちらへ」

すっとホテルマンの男性はにこやかにいいながらエレベーターホールの方へ向かう。

その後に自分たちもついていく。

僕は気になり、アヤメに耳打ちした。

「罠って事はないよね」

僕がそう言うとアヤメは首をかしげた。

「もし変なことを考えているならやめた方がいいわよ」

すると依乃里さんが前を歩きながら振り向かずに言った。

「ここは父が所有する会社のグループが経営するホテルなの。 ここの近くには黒百合家の護衛や、それに関係する人たちがいるから変なことを起こすようならただじゃ済まないわよ」

依乃里さんはまるで見透かしているかのように彼女はそう言った。

僕はその言葉に少しだけ、身震いした。

するとそれを見ていたのか、アヤメがゆっくりと言った。

「大丈夫だ、ミナト。 これぐらいならミナトを守れる」

僕は彼女の方を見た。

自信に満ちた表情で、アヤメはまっすぐに依乃里さんの方を向いていた。

はっきりとした声で言っていたが、依乃里さんはそれに反応することもなくただエレベーターの方まで向かっていく。

エレベーターホールにつくとホテルマンの男性は一番、大きなエレベーターへと誘導する。そこは最上階まで向かう為の機種で、内装もきらびやかな感じになっていた。

全員が乗り込むと、全員、会話もなく、黙ったままになった。

エレベーターはかなり速いらしく、一分も立たないうちに最上階へとついた。

扉が開くとそこは大きなレストランになっていて別の国にきたの家と思うくらい、雰囲気が違っていた。

店内は薄暗く二人がけの席が多くならび、テーブルの上にはコップのようなもに入ったキャンドルがボンヤリと照らしている。

席にはカップルや、まるでどこかの社長とでもいう感じのドレスコードをきた人たちがいた。

一介の高校生がいるのはかなり浮いた存在になりそうだが。

僕が呆けて見ているのに気が付いたのか、依乃里さんは口を開いた。

「ドレスコードが必要なんだけど、気にしなくていいからね」

そう依乃里さんは言い、どこか楽しげな感じを醸し出す。

ホテルマンの男性が店内へと案内を始めると席の間を抜けて、一番、奥側へと向かう。

そしてそこには大きな二枚の扉があり、ホテルマンの男性はそこへとつくと扉を開ける。

「こちらになります」

扉を開けて中へ入ると、そこには大きな窓が有り、この街を一望できそうなほどのパノラマで宙に浮いているのではないかと思うほどの眺めだった。

すでに外は暗くなり始め、ビルの明かりがポツポツと光り輝いていた。

部屋は中世の貴族が住んでいそうな煌びやかな内装で部屋の真ん中には真っ白い汚れのないクロスをひいた巨大なテーブルが一つ。

その周りを囲むように席が何席か用意されていた。

クロスが引かれたテーブルの上には白い皿にそれを取り囲むようにフォークやナイフが置かれていた。

依乃里さんはテーブルの一番、端の方に烏間に椅子を引かれ、着席していた。

「あなたたちも座ったら」

依乃里さんは優雅な感じでそう言うとすっと手を近くの席を指す。

僕とアヤメは言われるがまま、座る。

「では、順番にご用意いたします。 烏間さまに取り次ぎいたします。 私はこれで失礼いたします」

ホテルマンの男性はゆっくり礼をすると部屋から出て行った。

すると烏間が指をパチンとならす。

するとどこからわいて出てきたのか燕尾服をきた執事のような人たちが現れ、依乃里さん、僕、アヤメのテーブルに置かれたグラスに水を入れていく。

「さっきの男はここの総支配人。 でこの執事達は黒百合家の執事達よ」

執事達は一礼し、素速く席から離れる。

僕は依乃里さんの方を見る。

本当にこの人は大富豪とか呼ばれるような人間の一人なんだと実感した。

烏間が、ゆっくりと口を開く。

「順番に御食事を用意いたします」

そういうと執事達はどこかへと消えて言った。残されたのは僕とアヤメ、依乃里さん、烏間の四人だった。

烏間は依乃里さんの近くにたち、まるで護衛のように立っていた。

依乃里さんは此方をみてニヤニヤとしていた。「ようやく落ち着いて話ができそうね」

「そうですね」

「緊張してる? 別にいいのよ。気にしなくてまずはお腹を満たせばすこしは気持ちも違うでしょう」

そういって依乃里さんは扇子を出して顔に当てる。

正直、狙いはなんなのかと考えてしまいそうになる。

ここに連れてこられたのには何かしら目的がある。

そう思いながら僕は黙り、依乃里さんの様子を伺うことにした。

依乃里さんはただ黙ると目の前のテーブルに淡々と食事が運ばれてきた。

豪華なフレンチとでも言うのだろうか?

見たこともない食材の物が使われ、日常では確実に出会うことのない料理ばかりだった。

僕とアヤメは雰囲気に流されそのまま、食事をとることにした。

食事をしていると隣のアヤメは見たことがないからか、僕以上に、へーとかホーとかいいながら食事をとっていた。

依乃里さんの執事達が淡々と静かに料理を運び、僕とアヤメは食べるという状態が続いた。全員が黙り、ただ黙々と料理を食べるという不思議な状態だった。

メインの料理が運ばれ、それを食べているときに依乃里さんはようやくつぐんでいた口を開いた。

「じゃあ、ようやく本題の話をしようかしらね」

依乃里さんは扇子をぱちりと閉めた。

僕は手にしたナイフとフォークを置いた。

隣のアヤメは気にすることなく料理を食べていた。

「まぁ、そんなに気張らず聞いてくれればいいんだけど」

そう言って依乃里さんはまた烏間の方に掌を見せるような仕草をする。

烏間はスッと動くとまたタブレット端末を取り出した。

「見てて頂戴ね」

フッと照明が少しだけ暗くなると僕たちの正面、テーブルの上の部分にボンヤリと明かりが灯る。

立体映像の光がぼうっと灯ったらしい。

依乃里さんがタブレット端末を使用すると立体映像の方に一枚の顔写真が映し出された。

そこに写っていたのは女性の写真だった。

「ここに写っている写真の女はシロタ。Dr.シロタと呼ばれているわ」

アヤメが言っていた人物。

僕は写真をよく見る。

写真の女性は綺麗な顔立ちをしており、若くも見えれば、歳がいっているようにも見え実際の年齢も不詳なのだろうかと思ってしまうような容姿。 ただ気になるのは目の部分だった。 顔全体は綺麗で美人と揶揄されてもおかしくないはずなのにどこか目の中に光りを感じないような雰囲気だった。

「この女性と僕たちがここに呼ばれた理由が関係あるんですか?」

僕が依乃里さんに質問すると彼女はニヤリと笑った。

「かなり関係あるのよね。 今回、君を殺そうとした”ヴァイパー”を造ったのは彼女なんだから」

「…………?」

「言われてもわからないわよね。 じゃあ、此方が入手した情報を教えましょうか。 貴方のお父さんを殺した改造人間を造ったのもこの女」

「・・・・・・・・・・・・?」

僕は思わずアヤメの方を向いてしまった。

「本当なのか、アヤメ?」

ここに来て彼女の事についてもまだなんにも知らないに等しい。

知り得ているのは父の従者と呼ばれる人間で、戦地にいたことだけ。

アヤメはいつの間にかナイフとフォークを置き、ナプキンで口元をふく。

「それは知らなかった。 ただ彼女が同僚だということは知っていた」

アヤメは僕に向き直り、言った。

「ただ私は実際にこの女と会ったことはない。幸四郎からは元同僚の研究者でナノマシンを応用した技術で生物兵器を造ろうとしている知り合いがいるとだけは聞かされ、写真を一度だけ眼にしたことはある」

僕は開いた口がふさがらなかった。

「ミナト。 黙っていて悪いと思っている。けれど私は幸四郎を殺した人造人間を造った奴を知りたかった。 君を守る上でも大切だと自分で判断した」

彼女は真っ直ぐに強い眼差しで僕を見る。

「機会があればこの女を殺すか、話をききたいと思ってる」

アヤメは目の前の立体映像に映し出されたDr.シロタの顔写真を睨む。

「なら利害は一致ね」

依乃里さんはタブレットを操作し、また立体映像を変える。

「どういうことですか?」

「訳を説明するとさっきも言ったかもしれないけどミナト君はお父様のおかげで助かっていた。 そして助かる理由っていうのが情報つまり黒百合、大宮、天来、三家の根幹を揺るがす情報を貴方はある意味、お父様から遺産として引き継いでいるのよ。お父様が死に、そうするとどうなると思う? バランスが崩れ、また争いが始まる。 この御三家による争いがね」

操作された立体映像にはこの国の地図が薄く浮かび、そこには黒百合、大宮、天来の三家の名前が浮かび、VSとそれぞれの間に浮かび上がった。

「そこに目をつけたのがDr.シロタ。 彼女の目的が何なのか分からないけど彼女は間違いなく貴方を狙っているはずなのよ」

依乃里さんはだるそうに言った。

「でもなんで利害が一致しているんですか?」

「今回のこのごたごたはかなりややこしいの。黒百合はDr.シロタを捕まえようと考えているの」

「なぜです?」

「彼女は元々、天来の息がかかった研究所にいたの」

「つまり?」

「Dr.シロタのバックに天来がいる可能性があるの」

「それがなにかまずいんですか?」

「そうなのよ。 一応、争ってはいるものの、三家、ミナト君のお父様がいなくてもある程度の強力関係があるの。 黒百合と大宮は元々からの繋がりが強いけど、天来はどちらにもつかないし、簡単に言えば、一匹オオカミみたいな感じよ。 それに天来は貿易、軍事産業に顔が広い。それだけじゃない」

依乃里さんは表情を変えず、眼光を鋭くして言った。

「天来は紛争地域に武器の輸出や、介入などもしている。かなり危ない橋を渉る一家なの。そんな天来がバックについていてDr.シロタが遺産を手にし天来が覇権を握ったらどうなると思う?」

「・・・・・・・・・・・・?」

「巨額の金が動き、かつ他国と戦争をしかねないほどの流れに政治を動かそうとするわ。そうすると黒百合、大宮にとってはかなり経済的にも今まで作り上げてきたものが全て水の泡とかす。 天来は武力をさらに近隣の諸外国に売り、国内での力をつけるでしょう。

そうなる前にDr.シロタを捕まえるの」

依乃里さんは扇子を立体映像で映し出されたDr.シロタの顔写真にむける。

「アヤメさんはミナト君をシロタの脅威から守る為に動く。 私たち黒百合はDr.シロタを捕まえる。 だから利害が一致しているのよ」

ふふんと鼻をならしながら依乃里さんは言った。

「疑問に思うんですけど何で天来は自分達で動こうとしないんですか?」

もし本気僕を殺そうとしているなら天来のグループが動くはずだ。

「天来が別に動かなくても君を消せるとでも思っているんじゃないのかな? まぁ、以外な人物がいるからね」

僕は隣を横目でチラリと盗み見た。

アヤメの存在の事だろうか?

依乃里さんは気が付いたのか口元だけを歪めた。

「天来にとってアヤメさんはイレギュラーであり、考えてもいない存在だったんでしょうね。 きっと紛争地域にDr.シロタが造った改造人間を送り込めば大丈夫なんて思っていたんじゃないかしら。 ねぇ、同じ改造人間が紛争地域にしかも、曳舟幸四郎の元で一緒に闘っているなんて思いしないでしょう」依乃里さんはチラリと此方を見た。

「すべてお見通しってことか?」

アヤメはポツリと言った。

「いや、我々、黒百合の人間も予期していなかったわ。 まさか曳舟幸四郎自らの手で造ったナノマシンを持った人間がいるなんてことを。 でもアヤメさんがミナト君を”ヴァイパー”から救い出すときの力を確認できたからわかったものよ」

「そうか。 元々から知っていた訳じゃないんだな」

アヤメは短くそう言うと続ける。

「そこかアンタの言葉は信用できない。 どこかミナトを利用して何かをしているようにも思える。 もし手を組むだけというなら、ここまで回りくどいやり方をする必要はない思うが」

アヤメはしっかりと依乃里さんを見据えて言った。

「どういうことからしら」

「監視している対象にわざわざ自分達の存在を明かすことにどこか違和感があってな」

アヤメは表情を変えずに言った。

「ミナト。 考えてくれ。 もし本当にミナトの力が必要ならこんなことはしないし支配もしようとはしないはず。信用に当たるに等しいか考えてみてくれ」

「そう言われても……」

僕には確固たる自信などないし、この状況にどうすればいいのかまだ迷っているところでもある。

どうしたらいいのか分からない。

それが本音だし、それを彼女に伝えた時点でどうにかなるのか分からなかった。

僕が迷っていると依乃里さんの隣にいる烏間が口を開いた。

「お嬢様の言うことが信じられねぇっていうのか?」

「そういうことだ」

アヤメが短く言い切ると烏間が短く言った。

「お嬢様、失礼します」

その次の瞬間、烏間が僕の視界から消えた。僕が呆けていると烏間が僕の方にむけて小さい刃物をむけていた。

気が付いたときには目の数センチ先にきらりと光る刃先があった。

刃先は僕の顔を捉えることなく止まっていたアヤメが僕の後ろで横から手を伸ばし、烏間の腕を思いっきりつかんでいた。

「何のマネだ」

アヤメが冷静な声でいう。

「こういうことだよ」

烏間が叫ぶと別の手を手刀のように僕の頭にむけて振り上げる。

しかし、それが振り下ろされることがなかった。

アヤメがすでにナイフを抜き、烏間にむけ投擲していた。

烏間はその場から離れ、アヤメから距離をとる。

アヤメは僕の前に出て、腰からナイフを取り出す。

烏間は依乃里さんの近くにたち、ボクシングのようなファイティングポーズに似ているのものの指先を伸ばした独特な形の構えをとっていた。

「烏間、半分以上の力を出しなさい。 彼女は改造人間よ」

依乃里さんは扇子を開き言った。

「分かっております。 お嬢様」

烏間はニヤリと笑う。

「手加減はする必要がないですからねっ!」そう叫ぶと一気にアヤメに近づく。

その動きは速く細身からは思いつかないほど。「ミナト。 本気をだすよ」

アヤメがポツリと言った瞬間、彼女の髪の毛がエメラルドに発光する。

”ヴァイパー”と呼ばれる改造人間から助けてくれた時のような感じで彼女は自身の力を使っている。

ナノマシン。

彼女はそういった。

一瞬で近づいた烏間を彼女は迎え撃つ。

烏間が手刀をアヤメの心臓近く、左胸にむけて繰り出す。

アヤメは冷静にその手刀を右手で素速くつかむと、身体を動かさず右手だけを素速く動かす。

「うぉぉぉぉ」

烏間はただそれだけで空中に投げ飛ばされた。そう確認した瞬間にはアヤメの姿が目の前から消えていた。

すでにアヤメは空中に跳躍し、烏間の背後にいた。

烏間が一瞬で理解し、なにか動きをした次のときには烏間に空中で身体を捻り後ろ回し蹴りをいれる。

空中で何もない状態から勢いもつけずに身体を回転させるのをやるのは人間ができる範疇ではない。

僕は唖然としてその動きを見ていた。

蹴られた烏間は豪華な壁紙が施された壁に激突する。

「ぐっ」

くぐもった声を出し、床へ叩きつけられる。

すでに地面に着地したアヤメは素速く烏間へ間合いを詰める。

次の瞬間、先ほどまで給仕をしていた執事達がどこからともなく現れ、アヤメを四方から囲み刀、ナイフ、銃とそれぞれの武器を手に彼女にむけていた。

アヤメは烏間の直前で止まり、そのままのお状態で烏間にむけて冷たい目線をむけていた。執事の一人が口を開いた。

「退け。 次に動くと首をはねるぞ」

「やれるもんならやってみろ」

アヤメがそう言った瞬間、彼女が瞬きした次の瞬間、目にも止まらぬ速さでアヤメは、執事達に攻撃を繰り出し、執事達全員が気が付いたときには床に倒れていた。

「これで勝負は終わりだよ」

アヤメは烏間に向き直りそう言うと、手にしたナイフがすでに刀のように形状が変化しエメラルド色に発光していた。

それをスッと違和感なく烏間の首へむける。

烏間は口元に笑みを浮かべたまま、大量の汗をかきながらアヤメを見据えていた。

アヤメが次に何をするのか今まで思考停止していた僕は気が付き、口を開こうとした。

その瞬間、「おやめなさい!」と大きな声が聞こえた。

叫んだのは依乃里さんだった。

僕は一度、依乃里さんを見てからもう一度、アヤメの方を見る。

彼女は発光した刀を烏間にむけたまま、微動だにしなかった。

「ごめんなさい、アヤメさん。 貴方の力を試すようなことをして」

依乃里さんはペコリと頭を下げた。

「もういいでしょう。 改造人間の力は分かったわ。 ミナト君、お願い。 引かせてくれる?」

依乃里さんは僕にむかい、そういった。

僕は慌てて、アヤメに言った。

「もういい。 アヤメ。 僕は大丈夫だし、引いてくれ」

「…………」

数秒、アヤメは黙っていたが、すぐに力を解いたのかエメラルド色の髪が元の髪の色に変わりナイフも元通りになっていた。

アヤメは何も言わずに此方に踵を返すと、僕の隣まで、何事もなかったように歩いてくる。「烏間、それに他の者も引きなさい」

依乃里さんがそう言うと、全員がよろよろと立ち上がり、壁際の方まで移動する。

「もし私が命令したここにいる者以外が飛んでくる。 それを全て相手にする気?」

依乃里さんはアヤメに向かい問いかけた。

「……。 それがミナトを守るためなら私は自分の命をいとわない」

アヤメはそう答える。

僕はアヤメを見ていたが、何と答えていいのか分からず見ていた。

「戦争でも始める気かしら。 まぁ、いいわ……」

依乃里さんははぁと息を吐く。

「一つ言うけど、利害は一致しているの。アヤメさんの質問に答えるなら、確かにミナト君の事を排除するかもしれないと言ったけど、一応、こちらは君に危害をくわえる気は無いの」

依乃里さんは苦笑いを浮かべながら言う。

「それは味方と捉えていいんですか?」

僕は問いかけた。

「味方というよりは共同戦線と言った方がいいかしらね」

依乃里さんは扇子を広げながら言った。

「とりあえずDr.シロタはかならずミナト君を狙うのは分かっているの。 だから貴方の監視は怠らないし、まぁ、現れた際には我々も総力をあげて彼女を捕まえるわ」

「わかりました。 でもなんだかまだ実感がわきませんよ」

「それだけのことを言える余裕があるなら大丈夫よ」

僕が首をかしげながら言うと、依乃里さんは口元を歪め、微笑した。

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