第12話狂宴!鉄パイプ女開始!
[chapter:12]
「あっ、来ましたよデカ男さん!」
「おぉ、本当ですな」
検問所から出るとデカ男とエンピツ男が何やら談笑でもしていたようで、こっちに気付くと思い出したかのように駆け寄って来た
「少し時間かかったみたいすけど、なんかあったんすか?」
寄って来るや否や大声で質問をぶつけてくる
「まぁ、いろいろな」
と言うと
「いろいろあったんなら仕方ないですな」
と後から寄って来たデカ男がノソッと髭をいじりながら言った
「それより、早いところ行かねば戦闘が始まってしまいますぞ」
「そうっすよ!もしかしたらもう始まってるんじゃ」
「いや、それはねぇから大丈夫だ」
2人が「なぜ?」とでも言いたげな顔でこちらを覗く
「さっき検閲所でジュエリー男を見た。多分たった今4番街入りしたんだろ」
「なるほど!そういうことっすか!」
エンピツ男はポンッと手を叩く
「あぁ、だから後はガレキ女が出てくるのを待って、、、」
プルルルル、プルルルル。ケータイのベルが鳴る。俺のだけじゃない、エンピツ男に周りの賞金稼ぎと思わしき奴らのケータイも一斉に鳴り出した。
「おやおや、一気に騒がしい。災害情報なら私のケータイも鳴るはずですが?」
とデカ男は俺がチェックしているケータイの画面を一緒に見る
画面にはこう書かれていた
『ガレキ女VSジュエリー男 本日中止』
「本日中止!?マジっすかぁ!?」
エンピツ男が大声で叫ぶ。しかしこれは納得の大声で、周りの奴らも声には出さないもの動揺を隠せない様子でいる
「中止か」
「ふむ、よほどアナタと戦いたくなかったのですかな?」
デカ男は変わらず髭をいじりながら画面を覗いている
「いや、あのカンジは違うと思うんだが」
ジュエリー男との去り際の会話は争いは止めましょうとかじゃなく、もしろ戦場で会おう位の勢いだったのに、どういった風の吹き回しだ?
「何か怪しいねぇ」
「鉄よ。お主もそう思うか」
後ろから声がしてパッと振り返ると。筋骨隆々の大男(デカ男ほどじゃない)が立っていた。
「ふぁあ!サムライ男!」
エンピツが指をさし大声で驚愕の声を上げる
「おやおや、サムライ殿」
一方、対照的にデカ男は落ち着いた様子で頭を下げる
「おい!エンピツ、人を指さすなと教えただろう!デカは相変わらずの礼儀正しさだが、、、また少し背が伸びたか?」
「はい、8cmほど」
「そうか、とどまることを知らんなお前は」
この爺の名はサムライ男、町の護身術教室みたいなところで師範をやってるような奴だ。もちろんまともな護身教室ではなく自分の身を守るというより他人を殺すための技を教えている。そのためこの国の賞金稼ぎの中には爺の弟子もまぁまぁいる。エンピツ男もそのうちの一人だ。
「ところで鉄」
爺がこちらに目を移し、スッと目を細くする
「やはりこの件。何か裏があるとみるか?」
「あぁ、だが」
さっきの検閲所での様子を見るにジュエリー男の方に何か問題があったとは思えねぇ。つまり
「多分、問題があったとすればガレキ女の方だ」
「ふむ、しかし賞金首側の彼女が決闘取り下げなんてしますかな?」
「え?直前になってヒヨったとかじゃないんすか?」
エンピツ男が間抜けそうな声で疑問を投げかける
「バカ者、エンピツ。取り下げる際のルールを忘れたのか」
「あえっ?るーる?」
今度は間抜けそうな声ではなく完全な間抜け声でそう言った
「決闘を取り下げるには家が一軒建つほどの莫大なキャンセル料が発生するんですよ」
デカ男が横から言う
「いかにも、研究所からの脱走者とか言うガレキ女がそんな金持ってると思うか?」
爺はフンと鼻を鳴らし、空に目をやる
「となればジュエリー側が取り下げたとみるべきですが、市役所側がそんなことする意味ありますかな?」
「いや、公衆の面前で犯罪者を逮捕できるチャンスを市役所が金払ってまで見逃すとは思えねぇ」
一同うーんと悩むも、俺たちはさして頭がいいわけじゃねぇから何も思い浮かばねぇ。すると
ズパァン!!重い音が辺りに響き、誰かが叫ぶ
「おい!あれがガレキ女じゃないか?」
目を凝らすと確かに人影が、廃ビルの屋上にたたずんでいるのが見えた
「考えてたってしょうがないってことかね」
「どうやら、そういうことみたいですな」
「えぇ、結構強そうっす」
「エンピツ、引け腰なら物陰で休んどれ」
俺たちは音の鳴った方へ急いで走り出した。
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