第2話狂宴!鉄パイプ女出陣!

[chapter:2]

 

「ぐぅぐぅ」絵本のようなイビキを立ててソファに堕ちるこの女 名を鉄パイプ女

時間は昼下がりちょうど眠くなる時間なのか結構深めに眠っている しかしそこに

「起きろ!馬鹿垂れが」

顔に雑誌をたたきつけられ鼻先がジーンとなる 安眠から文字通り叩き起こされ、血管がピキりながら体だけを跳び起こし

「いっっっってぇなぁぁ」

最悪の目覚めによるイライラぶつけるため わざと低めの声で不機嫌そうに大声で喚き、体を大袈裟に揺らしながら壁に立てかけてある鉄パイプを杖代わりにソファーからヨロヨロ立ち上がる


「いつまでも寝てるアンタが悪いんでしょ」

ストレス解消のための怒りの演技も虚しく、悪態突きは軽くいなされる。

この女、家事はルームメイトに任せきりの典型的ズボラ寄生虫であり 代わりにルームメイトのヤンキー女がほとんどの家事を行っていた。

しかし前までは彼女にも流石に思うところはあるらしく家事を変わってやろうとすることもあった。しかしどうにも不器用であり上手くいかず、洗濯機をぶっ壊した際ヤンキー女に「家電に触れるな」と言われたために折角あった『思うところ』も跡形もなく消え去ってしまったのだ


「へいへいスイヤセンよ、買い物お疲れちゃん」

まぁ「家電に触れるな」と言われただけで家電を使わない買い出しなんかは出来るのだが、あの一件以降 何だかちょっと否定されたみたいな気分になり 家事をするとその気持ちが蘇るため結果何もしないズボラ寄生虫が出来上がったのだ。


「そうよ、アンタが寝てばっかでなんもしないから一人で重い袋を抱えて頑張りました。」

明らかな悪態返し、寝起きから効くねぇ ドサッ!とわざとらしい大音で買い物袋をテーブルに置きタメ息をつく

一見険悪としか言いようのない終わっとる空気だが大丈夫、いつものことだ安心安心

ヨロ歩きでテーブルに向かい買い物袋をあさり始める鉄パイプ女、厚かましや これには椅子に座って一息つくヤンキー女も怒りのテーブル指先トントンで対抗


買い物袋をあさる鉄パイプ女、何かに気付く

トン

「あれ?お前あれは?」

トントントン

「頼んだじゃん乾電池」

トントントントントン

「え?まさか忘れた?おいおいちゃんとメモに書いとくとかさぁ」


バァンッ!!

ポケットから取り出した乾電池を机に叩きつけるヤンキー女 これには鉄パイプ女もビックリ

「スーパーに  無かったから  わざわざ  電気屋さんで  買ってきました」

怒りの区切り言葉による発声 これが出ちゃあ適わんね

「ウッス サーセン」ペコリと頭を下げ乾電池を開封し 同じテーブルに乗っていたテレビリモコンに入れてチャンネルをつける


テキトーにボタンをポチポチした後

「推理ドラマ、いやニュースか」

部屋の中の終わりの空気を喚起すべく、小さな声で悩んだふりをする鉄パイプ女

それに気付いたのか今度は本物のタメ息を「はぁ」と吐き

「そろそろフィッシャーマンやるんじゃない?チャンネル合わせときなさいよ」

と言って立ち上がり買い物袋から取り出した食材たちを冷蔵庫に入れ始めるヤンキー女

大体いっつもこんな感じで小競り合いは終わるのであった。


チャンネルを合わせた後、再びソファーに寝ころび番組開始を待つ

寝ころんだとき後ろのキッチンから「また寝るの!?へ~!!」と耳障りの極みボイスが聞こえたが 目を瞑り深呼吸をした後、クッションを殴りつけることで何とか抑えた。


『、』

『、、』

『、、、ハーイ!ウォーーー!フィッシャーマンチャンネルへようこそ!全国の兎にも角にもお金が欲しい腐った生ゴミども、調子はどうだい?、、、返事がないなぁ相変わらず冷たい限りだねぇ』

「あー?MC前回変わってなかったっけ?」

「殺されたから前のMCに戻ったらしいわよ」

「マジかよ最悪、俺こいつ嫌ぇなんだよ」


『今週のトピック、まずはこれだぜ!あのクソうるさかった忌まわしきスチューデントジェノサイダーがついに!ベッコベコに凹まされた挙句廃工場に不法投棄されてたらしい!いったい誰がやったんだぁ?』

「あらこれ、アンタがやったやつ」

「あー、たまたまぶっ壊してよぉ、賞金でもかかってねぇかなと思って市役所持ってったらさぁ、逆に引き取り料金掛かるとか言うから捨ててきたんだ」

「賢明な判断ね、ただでさえ今月キツいのに」

「あぁ、そろそろドカッと稼がなきゃな」


『、、、さぁ続いてのコーナーは、みんな大好きフィッシャーマン情報のコーナー!!』

「あ、始まった」

「メモ取りなさいよ、メモ」

「へいへい」

『まずは一件目!3番街ヘドロ町にて過激派反出生主義団体幹部、チューブ男と新進気鋭の家具職人、トンカチ女が決闘を繰り広げるらしいぞ!両者ともに賞金首、漁夫の利を得たい奴らはカモン!』

「これは?」

「パス、両方とも賞金が低すぎる」


『二件目ぇ!5番街ドブネズミ町にて指名手配中のファイヤーボーイ、炎熱男とカルト教団キルティスの教祖、メタル男、、、』

「これは?」

「パス、メタル男はもうとっくに処刑されたらしいからコレは罠」


『、、、七件目だぜボーイアンドガールズ!本日最後の決闘情報はこぉれぇだぁゼイッ!』

「どれもこれも何かパッとしねぇなぁ」

「そうねぇ」

ズゾゾゾゾとコーヒーをすする音が聞こえる、俺も飲みたいなコーヒー

『4番街スモッグ町にて研究所からの脱走者、ガレキ女と熟練市役所職員、ジュエリー男が決闘を繰り広げるらしいぞ!ジュエリー男は市役所からの賞金はでねぇが裏社会のマフィアから、、、』

「グエッ、おっほげっほ」

突然後ろのヤンキー女がむせて咳き込み始める


「なんでぇどうした」

「こっ、この子、、、幼馴染の」

「えっ!このオッサンが!?」

ガンッとマグカップを叩きつける

「違うわよっ!こっちのガレキ女の方!」

ヤンキーがゲホゲホしながら女の顔写真を指さす


「なんでこんなことに、、、」

「研究所からの脱走者って言われてんぞ、攫われて改造でもされたんじゃねぇの?」

「確かにいつからか見かけなくなったけど、まさかこんなことに」

段々と声が小さくなっていくヤンキーが何だか少しエロく見える、俺の性癖かな?


「助けてぇのか?」

「、、、そりゃあ、助けたいわよ。けどジュエリー男相手じゃあ」

「俺なら勝てるぞ」

ゆっくりと顔を上げるヤンキー女

「いいの?」

「もちろん!ルームメイトじゃないか俺たち、、、まぁ多少の見返りは欲しいが」

顔がムスッとしてこっちを睨む

「何よ」

「思い切りのハグを」

「、、、帰ったらね」

ようし決まりだ。俺はヤンキーが飲んでいたコーヒーを強奪して飲み干し、怒りの声を背に町に飛び出した

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